機動戦艦ナデシコ    〜忘却の白銀色の戦士〜
 

                             復讐、それは僕にとって何を意味するんだろう

                             復讐したところで何かが戻ってくる訳でもない

                             それでも何もしないよりマシだと思っていた・・・

                                   どうせ・・・僕は・・・・僕は


                                   死んでしまうのだから・・・・・







                       
 第6章  死へ進む為の叫び






ナデシコB



「貴方がナデシコBの新艦長ですか?」

「・・・・・・・」

「まさか、貴方が来るとは、ネルガルは何を考えているのやら」

「・・・・・・・・・」

プロスは眼鏡を摘むと上下に揺らした。

「でわ、こちらにどうぞ」

そうして新艦長と呼ばれる人はゆっくりとプロスの後を着いて行く。

「そういえば、お連れのもう一人の方は?」

「少し遅れてくるらしい。もしかしたら来ないかもしれない。一人は・・ね」

「そうですか」

そうしてナデシコBのブリッジに到着した

「お待たせしました。この方がナデシコの新艦長さんです」

ブリッジに居る全ての人がその新艦長に目を向ける

「お前は・・・」

「嘘・・・」

「・・・・・どうして、貴方が」

ブリッジは一瞬にして重い空気に包まれる。そうして新艦長はゆっくりと自己紹介を始めた

「名前は・・・・・・」



ユーチャリス内部


「さってと、それじゃあ最後の仕上げ、やりますかね」

カイトはナデシコから持ち帰ったデータと今までのデータを調べていた

(気になるところ・・・、妙に引っ掛かるんだよ・・・ここが)

そう考えてそこの部分だけを念入りに調べる。

しばらく調べているとブリッジにラピスが入ってきた。どうやら目が覚めたらしい。彼女は昔と違い、食事も睡眠も遊ぶ事さえある。カイトはそれを嬉しく感じた。

「お早う、カイト」

目を擦りながらラピスはカイトの横の席に座る。

「お早う。ラピスちゃん」

カイトはラピスに挨拶だけするとそのままIFSを光らせながら作業を続けた。

「まだやってたの?」

「ああ、もう少しで分かるからね」

「ふ〜ん」

ラピスはカイトの肩に顔を乗せて調べているデータを見た。カイトはその行為を気にせずにラピスに分かりやすく説明する

「前回の戦いって言っても僕は知らないけど、このヒサゴプランがね・・・。今は壊滅状態であまり使えないけど、利用できない事はない」

「そうだね。メインコロニーのアマテラスが無くなったって言っても他のターミナルコロニーは機能してる」

「だからね・・・ヒサゴプランのメインシステムの事が気になってね・・・」

「でも、あれはたしか」

「そう、まずメインシステムを干渉する事は出来ない」

カイトはそう言うとラピスの顔を離すようにして、オペレーション席に座った。普通はラピスが座っている席なので少し狭い作りなっていたが構わず進路を設定する。

「行き先・・・メインコロニー、アマテラス」

カイトはそう呟くとアマテラスへと進路を取った。

「あ、通信が入ってる」

ラピスはネルガルから送られてきた映像を大きなウィンドウにしてカイトに見える様にした。












、この宇宙は

偽りの正義と秩序のもたらす悪しき呪縛により腐敗している

我々、「火星の後継者」は草壁中将の意志を継ぎ

真の正義と秩序を復活させるために

地球連合及び総合軍に対し

今ここに再び

宣戦を布告するものである!!



                                   END

  



カイトはそれを見た瞬間、震えだした。

「・・・・・とうとう、引き金を引いたな・・・」

カイトの顔は微笑みを浮かべていた。それはまるで・・・凍てつくほどに冷たい微笑み

「カイト・・・・」

ラピスはカイトのその顔を見た瞬間、怖くなった。

(カイト・・・変わらないで、お願い)

「ラピスちゃん、どうした?」

(変わっちゃ嫌、・・・嫌)

「変わらないで」

「・・・・・大丈夫さ。僕は変わらない・・・ずっとね」

カイトはラピスの頭を撫でると優しい笑顔を作っていた。ただラピスはその時に笑顔を返す事は出来なかった

カイトは気にせず、ふつふつと沸き上がる怒り似た感情を抑えてブリッジから出て、一人、展望室に向かった。

「お願い、カイトをあの時のアキトと一緒にしないで・・・優しいあの人を変えないで」

ラピスは誰にそれを願ってたのだろうか・・・星はゆっくり動きながら、アマテラスへと向かう。

「イツキ・・・壊れよう。共に・・・僕と共に・・」

カイトは展望室で笑っていた。一人、壊れたように・・・・

・・・・・どうして

カイトは笑いながら、自分の中に聞こえるイツキの声を無視した。イツキは望んでいない。カイトが復讐者になる事を・・・カイトは・・・それを知っているのだろうか・・・





ナデシコB



「名前は・・・・テンカワ・アキト。みんな久しぶりだね」

アキトはそう言うとみんなに笑いかけた。

「アキト君」

「アキトさん」

ルリはアキトに駆け寄った。

「アキトさん、どうして貴方が?」

アキトは笑いながら説明を始めた。

「ちゃんと話すよ。だから、そんなに焦らないでよ」

「はい」

ルリは静かにアキトが話始めるのを待った

「俺はカイトに会った後に地球で手術を受けた所までは知ってるね?」

「はい」

「その後ね、アカツキさんにお願いして、このナデシコに乗せて貰う事にして貰ったのさ。5感にはまだ少し不備があるけど、もう完治したって言っていいほど治ってるから」

「あら、アキト君はラーメン屋さんをしないといけなかったんじゃないの」

ミナトがアキトに向かって質問した。ミナトにも思うことはあるだろうが今のアキトの姿を見たらどうでもよくなった。あの時の墓地の時とは違い、彼は昔の姿に戻っていたからだ

「俺は・・・カイトに借りがある。だから、今のあいつを止めたい。・・・止めれない事は分かってるけど・・・止めたいんだ」

「・・・アキト君」

アキトは拳を握りながら思い詰めた表情した。止める事が出来ないのは分かっているけど、止めたい・・それは自分が一番よく知っているからだ。

「アキトさん・・これ」

ルリは預かっていた紙を渡す

「テンカワスペシャルです」

「・・・カイトにこのラーメン食べさせるって約束もしたからね」

アキトは有り難うと付け加えて、ルリから紙を貰う。

「おい、アキトが戻ってきたって」

ブリッジの扉が開いてリョーコ達が入ってきた

「やあ、リョーコちゃん。久しぶり」

「アキト・・・帰ってきたんだな」

リョーコは嬉しそうに笑いながらアキトの肩を叩いた。ヒカルとイズミも嬉しそうに笑っていた

「嬉しそうにして居るけど、いいからしね」

ブリッジの扉の辺りからイネスが声をかけた

「イネスさん」

ブリッジに居る全員がイネスを注目した。

「彼は、アキト君は実際には新艦長ではないのよね。ただナデシコに乗るために色々な段取り結果がこうなってしまっただけよ」

イネスは説明するように話を続けた

「私達の目的は火星の後継者の残存部隊の壊滅。彼らは動きだしたのよ。この映像を見てくれるかしら」

イネスがコミュニケーターを弄くると巨大なウィンドウが現れて再生された。











今、この宇宙は

偽りの正義と秩序のもたらす悪しき呪縛により腐敗している

我々、「火星の後継者」は草壁中将の意志を継ぎ

真の正義と秩序を復活させるために

地球連合及び総合軍に対し

今ここに再び

宣戦を布告するものである!!



                                   END




「これは・・・」

「とうとう、正体をさらけ出したのでしょうな」

プロスはまるで何かも知っていた様な口振りだった

「奴らは・・・まだ生きているんだからな」

アキトはほんの一瞬だけ復讐者の顔に戻った。だがすぐにその顔を引っ込めた

「しかし、テンカワさん、あの時のような事はしないで貰いたいのですが」

「分かっています。俺はカイトに会って戻ることが出来たんですから、もう・・・あの時にみたいな事できませんよ」

アキトは微笑みながらプロスにそう告げた

「アキトさん、ユリカさんはどうしたんですか?」

「ユリカは後でこっちに来るらしいけど、もしかしたらって事もあるからちょっと別件に当たって貰ってるよ」

「別件・・・ですか?」

「うん、まあ嫌だ〜って言ってたけどね」

アキトは笑いながらルリにユリカの事を教えた。

「そうですか」

「そういえばルリちゃん。カイトは・・・どうしてるの?」

「えっ」

「ナデシコBに来たんだろ」

「はい・・・。火星の後継者の情報を貰って・・そのまま何処かに」

「そうか・・・やっぱり帰ってこなかったんだね」

「・・・・・・・・・・・はい」

ルリは暗い表情を浮かべた。

「でも・・きっとカイトさんは会いにきてくれます。約束・・・しましたから」

「ルリちゃんも約束か・・」

「はい」

アキトとルリは何処か居る一人の家族の事を思っていた。必ず帰ってくる。そう信じて

「あの〜。艦長」

出遅れて全然話についていけなかったハーリーが口を開いた。

「その人とはどんな関係なんですか?」

ハーリーは真剣な表情をしてルリに聞いた。ルリは何の事か分からなかった

「その人とは誰ですか?。アキトさんですか?。カイトさんですか?」

「両方です」

「両方・・・ですか」

ルリは考える仕草をしてハーリーの方を向いた。ますます真剣な顔にハーリーはなる

「アキトさんは家族であり、お兄さんでもあります。前に写真を見せたはずですが?」

「はい、それは知ってますけど」

まず一つ障害を乗り越えたハーリーはホッとした

「カイトさんは、・・・・大切な人です」

「そっそれは家族って意味ですよね。艦長」

ハーリーは少し顔を引きつりながらルリに真実を聞いた

「・・・・・・大切な人・・です」

ルリの顔が赤くなっていくのがハーリーには分かった。

プチ

ハーリーの中で何が音を立てて切れた

うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん

ハーリーは叫びながら廊下に向かって走りだした

「哀れ・・・ハーリー」

サブロウタはゆっくりと手を合わせて廊下に拝んだ

「あの子、ハーリー君だったよね」

「はい」

「なんで叫んで走っていったの?」

「知りません」

アキトとルリは訳が分からないまま、その場に棒立ちした。ミナトはやれやれといった表情していた。



アマテラス付近 宇宙


「カイト、着いたよ」

「分かった。敵の確認をしてくれるかい」

「了解・・・」

そうしてラピスはレーダーで敵を確認するが敵の姿はなかった

「敵反応なし」

「・・・・妙だな・・」

「カイト?どうしたの」

カイトはこの場所の空気が異様におかしい事を感じていた。

「ラピスちゃん、シルバーで出る。フィールドを張っておいてくれ」

「カイト?」

「いいな」

「了解」

ラピスは事情を説明されていないので訳が分からなかったがカイトの言う通りにフィールドを展開した。

「この感じ・・・何かあるとしか言いようがない」

カイトはシルバーエステを発進させると周りの気配を感じとる様に精神を集中させた。

シャリン・・・・・・・・・・バシュ

「ちっ!!!」


カイトには聞こえた。それは機動兵器が使う錫杖の音

ラピスちゃん、フィールド出力、全開!!、急げ!!

「了解」

ラピスは冷静にフィールドの出力をあげた。しかし間に合わずに大形の錫杖にフィールドを貫通されて船に突き刺さる

「!!」

少しの振動と共にユーチャリスは左側面の方から煙が上がっている

「ラピスちゃん!」

カイトは少し焦りながら通信を繋げた。

「大丈夫、左側面の装甲がダメージを負っただけ、後は問題ない」

カイトはホッとしながら周りの気配を感じとった

そこか!!

カイトのシルバーエステがフィールドランサーαを振り上げてアマテラスの残骸の後ろに隠れていた機動兵器を残骸ごと切り裂く

(手応えがない・・・外したか)

カイトは冷静になりながら周囲を探った。レーダーは以前反応なし。既にそのことを理解していたカイトはレーダーを頼らずに己の集中力だけで敵の場所を感じ取っていた。

(少なくても敵は3機・・・ユーチャリスは戦艦だから的に為りやすい。どうする・・・)

「カイト、気を付けて」

(分かっているよ、ラピスちゃん。残骸が邪魔なんだよ。・・・残骸、そうか)

「ラピスちゃん、グラビティブラスを撃てるかい?」

「無理、フィールドに出力を回してるからチャージ完了まで後10分」

「そうか、・・・ならば」

シルバーエステは後ろのグラビティキャノンをセットした。

「リミッター解除、目標、前方の残骸全て」

カイトは残骸に向かって、グラビティキャノンを発射させた。残骸の3分の2は吹き飛び、敵の姿が現れる。

「あの機体は・・・・」

敵の機体はカイトは初めて見るだろうが、ラピスには覚えがあった

「六連・・・しかも4機・・・」

「ラピスちゃん、その六連って奴は」

「そう、アキトの最大の敵に機体の一つ。北辰の部下」

「なるほど。アキトさんの尻拭い・・・か」

カイトそう言うとシルバーエステを最大の機動力で飛ばす。

「はっ!」

フィールドランサーαを横斬りにしながら六連を切り裂こうとするが避けられる。

「滅・・・」

六連の一人が錫杖をシルバーエステに向かって投げるがカイトはそれ避ける事をせずに斬り裂く

「なに!」

とった!!

シルバーエステのフィールドランサーαが六連の一機を斬り裂いた。

「己・・・殺人傀儡め」

そうして爆発する六連の一機。しかし一機倒す間にユーチャリスにはかなりのダメージを喰らっていた。右側面からも煙が上がっている

「くっ、このままでは・・・」

カイトは焦っていた。このままではユーチャリスが沈められる可能性もあるからだ

「くそ・・どうすれば」

跳躍

「えっ」

頭の中に小さい声が聞こえた。それをすぐに理解するカイト

「そうか、分かったよ。・・・・イツキ」

カイトはボソンジャンプして目の前の六連を切り裂いた

「跳躍だと、馬鹿な」

カイトはすぐにジャンプすると3機目の六連を大破させる

「くっ・・・退散か」

後一機の六連は逃げるが追う事は出来なかった。ユーチャリスはボロボロになり、カイト自身も胸が苦しくなったからだ

「ハァハァ、イツキ・・・・有り難う」

カイトは苦しみながら自分自身にお礼をする様に呟いた。


「カイト、大丈夫?」

ラピスが心配そうに通信を開く。

「大・・・丈夫だ。薬・・・飲めば・・・おさ・・まる」

カイトは懐から薬を出すとそれを飲んだ

「ハァハァ・・・ハァ」

(この機体で短距離跳躍は、不可能・・・何故出来たんだ・・・それに・・・発作が・・・)

カイトはそのまま目を瞑りながら自動制御でユーチャリスに帰還した。

ラピスは格納庫でカイトの帰りを待っていた。通信した時に発作が起こっていたのだ。心配じゃないはずがない。

「カイト」

シルバーエステが入ってきて固定するのを確認するとすぐにコックピットに向かった。

「ハァ・・・ハァ・・・」

カイトは薬を飲んでいたが発作は未だ収まっていない。ラピスはカイトの手を握り、発作が収まるまでずっと側にいた。



命の灯火は儚く、短い・・・・

ではカイトの命もそうなのだろう・・

その短い間にカイトは何が出来るのだろうか・・・

それはカイト自身が知っている・・・






どうも、如何でしょうか。第6章 死へ進む為の叫び。

いや〜書き換えを変えてみました。あの色々勉強していく内に私はあの書き方は無理だと_| ̄|○

悟りました。これで少しはいいと思いますが・・・いきなり書き方変える作者って・・・( ´・ω・`)

「う〜ん。まず最悪な作者よねぇ」

ミナトさん・・・痛いって_| ̄|○

「まあ、これからも精進しないといけないわね」

はいで御座います。_| ̄|○

「じゃあ、また感想を待ってるわね」(はぁ〜と)

・・・・・うぁぁぁぁぁぁぁん

(ハーリー君の気持ちが分かりました・・・)



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