機動戦艦ナデシコ    〜忘却の白銀色の戦士〜
 

                            今、僕が求めているものはなんですか?

                          それが分からないのに僕は求めるんだろうか・・・

                          大切な家族の元を離れて、復讐と言う理由で生きて

                                 約束を大切な所に閉まって

                         だけど・・・・・・・僕は生きている・・・・約束と言うだけの理由で 




                           僕は一体、何を求めて・・・・・・いるんだろう・・・・・・・・






                  
 第4章    過去と今の鏡の中で・・・・・




宇宙


「ラピスちゃん、敵の援軍はどうだい?」

カイトはシルバーエステを旋回しながら、フィールドランサーαで敵戦艦を沈めた。

「今の所、反応はなし」

「そうか・・・」

白銀に光るシルバーエステはフィールドランサーαを振り上げながら敵戦艦を切り裂く。敵戦艦は大破した

「くそユーチャリスめ・・・このエステバリスはなんだ。黒い復讐者の新型なのか?」

「艦長。あれはもう黒いとは言いません。白です」

「そんな事はどうでもいい!!」

敵戦艦の艦長は焦りながらシルバーエステにミサイルを発射させる指示を出す。ミサイル数は7。普通のパイロットでは避ける事なぞ不可能な数にも関わらず、カイトはフィールドランサーαで4個のミサイルを切り裂き、残りのミサイルを綺麗に避けた。しかもミサイルを斬った瞬間に俊速的な機動力で動く為にミサイルの爆風に巻き込まれる事もなかったのだ

「なんて機体なんだ・・・情報の黒い機体の性能の更に上を行くと言うのか。ありえん・・ありえんことだ」

「カイト、戦艦あと一機、戦闘エリアを離脱する」

「・・・・・逃がさない」

カイトは機体の後ろにあるグラビティキャノンを構えた。初の実戦投入にも構わず、カイトは照準をセットした

「・・・さよなら」

カイトはそう呟いて、グラビティキャノンを発射させた。

ギュイィィィィィィィィィンーーー

シルバーエステの肩に背負う様にしてグラビティキャノンは放たれた。それは初代ナデシコのグラビティブラストの威力を更に上回っている様にも感じられる。そして最後の敵戦艦を一瞬にして消滅させた

「なんて威力だ」

カイトは己が撃ったキャノンの威力に驚いていた。自分自身が初めて使った武器、ヤマサキが開発にも携わっていたのだ。それだけの危険性が考慮されているのは明らかだった。

「ラピスちゃん・・・帰還する」

「了解」

そうしてカイトの復讐劇が始まった。






ユーチャリス内部



カイトはシルバーエステから降りて、そのエステを見上げた。

シルバーエステバリス・・・・または白銀天光・・・か。たしかに奴が作った機体だ。殺傷能力がずば抜けている・・

「カイト、お疲れさま」

ラピスから通信が入った。ラピスには安堵の顔色が一目で分かるほど安心していた

「ああ、ラピスちゃんもよくやってくれた」

そう言って格納庫から出てブリッジに向かう途中に何か胸が苦しくなっていたのが分かった

「カイト、どうしたの?」

ブリッジに着いたカイトの息は荒く、胸を押さえながら苦しい表情していた。

「・・・ハア・・・ハァ・・・・ぐっ・・・あああ」

カイトは椅子に座って胸を押さえながら、急激な胸の痛みに耐えた。

「カイト、どうしたの?」

ラピスが心配して駆け寄ってきた。カイトはポケットから薬を出して一つ飲み込んだ。

「うっ・・・・ぐう・・・・ハァ・・・ハァ・・・」

「カイト・・・」

ラピスはカイトの手を掴んで必死で願った。

お願い。この人を消さないで、私は一人はいや、この人と一緒生きたいの。だから・・・お願い

「ハァ・・・ハァ・・・・ラピスちゃん、心配・・ない。これが・・・発作か」

カイトは初めて来る発作の恐ろしさを知った。今までは朝起きてすぐに薬を飲んでいたので別に発作なぞ起こらなかったが、この様に発作が起きたのは薬の投与の量が追いついていないのだ・・・

「これだけ・・・あるのに一個じゃやはり駄目か・・・。一ヶ月・・・奴の言っていた言葉が理解できる」

「カイト・・・」

ラピスは泣きそうな顔をしながらカイトの胸に顔を埋めた

「ラピス・・ちゃん。どうした?」

カイトは苦しそうにしながらも落ち着きを取り戻していた。

「一人は・・・嫌、怖いのは嫌」

「・・・・ラピスちゃん」

カイトはそのまま動こうとせずにラピスの頭を撫でながら、流れていく星を見ていた。

・・・・・・・・あと・・・26日・・か

タイムリミットは・・・・短い

カイトはそれを痛感しながら席を立った

「あ」

胸に埋まっていたラピスも一緒に立つような形になり、カイトから離れた。

「料理・・・」

「え?」

カイトはもう一度ラピスに聞こえるように言った

「料理、作るかな」

「どうして?」

ユーチャリスには食堂はあるがそれが使われる事はなかった。味覚を失ったアキトが料理なぞ作れるはずもなく、今はホコリを被っているのだ

「別に・・・ただの暇つぶしだ。火星の後継者の進路はまだ分からない。今日はたまたま先に予測できただけだ。何時もこんな風に予測できるとは限りない。なら暇つぶしをするだけだ」

アキトはその間はブラックサレナの整備なぞをしていたのだろうが、カイトは別に整備は後回しにしようと考えていた。機体の損傷も0。整備をしっかりするぐらいの事はグラビティキャノンに新しい弾丸を詰めるだけだったからだ。その弾丸製作もシルバーエステの記録にあり製作も既に幾つか出来ている。

「料理って何?」

ラピスがまるで何も知らない猫の様な顔してカイトに質問した。ラピスにはまるで必要なかった事だったからだ

「いいよ、教えてあげるよ。一緒に厨房の掃除からしてくれると助かるけどな」

「分かった」

そうしてカイトとラピスは食堂に向かった。ラピスは顔には出ていないだろうが内心は嬉しかった

どうして・・料理なんて思ったんだ・・・カイトは自分の言葉に少し疑問を抱いていた。それはまだ彼が変わっていない証拠だった




厨房



「こうして、麺を作る。まあ簡単にすればいいからさ」

「わっ分かった」

カイトとラピスは食堂の掃除を終えて、今はラーメンの麺作りをしていた。幸いにもラーメンの元となる材料が厨房にはあった。それはアキトが無意識に集めた物なのか。それを使い、カイトは優しく丁寧に教えていく。いずれ彼女もアキトとユリカと一緒に住んでラーメンを作るのだからと・・

「カイト、なんか気持ち悪い感触だね」

ラピスはエプロンを付けてコネコネとラーメンの麺の元になる物をこねていた。

「そうかな?。別に僕はその感触は好きだけどね。初めてだからじゃないのかな?」

カイトもエプロンを付けて今はスープの仕込みをしていた。服装は勿論着替えてバイザーも外していた。

「初めてだから?」

「そうだよ」

「そんな物なの?」

ラピスはそう言ってカイトの側に寄ってきた。そして手を祓ってカイトのスープ仕込みを見ていた

「あれ?麺は?」

「終わったと思う」

カイトはテーブルの上に広がった綺麗なほどの麺の元を見て感心していた

この子・・・美味いな

「どう?」

ラピスはそう言ってカイトの顔をのぞき込んだ

「うん、上手だ」

カイトはそう言ってラピスの頭を撫でた。

「よかった」

無表情と言っていいほどのラピスだがハッキリと分かるほどの笑顔をカイトに向けた

「ホント、上手だね・・・・あの子みたいに」

「あの子?」

「別になんでもないさ。さあ、スープの仕込みっと」

カイトはそう言ってスープの方に戻った。

あの子・・・・ルリちゃん・・・・君も一緒にこうやってアキトさんと僕と一緒に麺を作ったね・・・君の方が僕より上手で綺麗だったから・・

カイトはルリの事を思い出しながらスープを作り続けていた。

「あの子・・・・誰?」

ラピスはカイトのあの子と言う言葉が気になるのだろう。カイトが動いては横に行き、横に動いては横に行き、誰と聞いてくる

「あっあははは」

カイトは乾いた笑いをしてラピスの頭を撫でながら作業を続けた。あの子を教える事なく

「よし、スープを後は煮込むだけだ。ラピスちゃん。最後に麺を?あれ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ラピスは天井を見ながらボーっとしていた。

「どうしたんだい?ラピスちゃん」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アキト」

「・・・・・・そうか」

手術は成功したのだろう。アキトとラピスの精神は完全に切断された事をカイトはすぐに分かった。

「・・・・・・・・一人・・・」

「・・・・ラピスちゃん」

「あっ」

ラピスは少し驚いた。気がつけばカイトがラピスの目の前になる様にしゃがみ込んでいたのだ

「アキトさん。最後になんだって?」

カイトには分かっていた。アキトが最後にラピスに言った言葉を分かっていながらも聞きたかった

「・・・・有り難う。だって・・」

「そうか」

カイトは微笑んでラピスの頭を撫でた。

「・・・・・私はこれで一人になるんじゃないよね。カイトが居るから」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

カイトは答えないでラピスの頭を撫で続けた。答えれるはずがなかったから

ラピスはそれでも少し微笑んで気持ちよさそうに目を細めていた

「さってとラーメン。作ろうか」

「はい・・」

そうしてカイトとラピスの最後の仕上げが始まった。ラピスにとっては初めての自分自身で食べると言っていい料理に期待していた

「よし、お終いっと」

「はい」

「なら向こうで座って待っててくれないかな?。すぐに持ってくる」

「はい」

そうしてカイトはすぐに手慣れた手つきでラーメンを皿に移動させてスープを注いだ。

「お待たせ〜。さあ、食べな」

「頂きます・・・」

カイトは微笑みながらラーメンを食べるラピスを見ていた。

「美味しい・・・」

「そうか。よかった」

カイトはますます笑顔になり、この瞬間のラピスの為の思い出を一つ増やした事を嬉しく思った。

「おかわり」

「はいはい」

そうしてラピスとカイトの料理は終わった。思い出・・・彼女も大切にしてくれると嬉しいな・・・








地球、病院






「アキト・・・大丈夫だよね」

「彼なら心配ないわよ。必ず治るって彼と約束したじゃない」

エリナは待合室でアキトの手術が終わるを待っていた。この手術は50%と言う半分の成功確率だった。

「お待たせしました」

「先生!!アキトはアキトはどうなりましたか?」

ユリカは手術した医師に詰め寄り結果を聞いた。医師は少し怯えていたが

「えー手術は成功しましたが、5感の内の少しには影響が残ります」

「そう・・ですか」

エリナは明らかに分かっていた答えを聞いたが少し暗くなった

「ですがね。彼ならリハビリを頑張れば、影響は残りますがきっと全ての感覚、戻るとは思いますよ。既に味覚は完璧に戻りましたからね」

「それ、本当ですか?。先生」

「ええ、彼はずっと独り言の様に一人の男の名前を呟いていましたよ」

「それって・・・」

「たしか・・・カイト・・・でしょうか」

「・・・・カイト君、アキトは治ったよ。約束守ったよ」

ユリカは嬉しそうに窓から見える空を見上げた。

「では、もう少ししたら彼と面会が出来ますから、それまで少しお待ち下さい」

「私は失礼するわ。手術は成功。一応、会長にも教えておくわ」

「はい、色々有り難う御座いました」

「じゃあね」

そうしてエリナは病院から出ていく

「カイト君、これから私たちはきっと・・・」





手術室




「目が覚めたみたいだね。テンカワ君」

「先生・・・手術は?」

「成功ですよ。大体の感覚は戻っています。君の5感に為っていた子とのリンクも切り離しました」

「そうですか」

「ただ、前の改造の光る現象・・・あれは我々の力ではどうしようもありません」

「いいんです・・・もういいんですよ」

「そうですか」

アキトは手で拳を握ってみた。

「感覚が・・・ある」

アキトは嬉しそうに一人の男の名前を呟いた。

「有り難う・・・カイト」

アキトはこの時に一つの決意を固めた






ナデシコB



今日はアキトさんの手術の日と言うことはルリは調べて分かっていた。結果が気になって仕方ないのだろうか。ボーッとしたまま本も読まずにただ艦長席に座っていた

「最近の艦長って、少しおかしいですよね?。体の具合悪いんですか?」

「んな訳ねぇだろ。色々な事がいっぺんに来ると誰でもああなるんだよ」

「サブロウタさん、それどういう意味ですか?」

「別にー、ただそんな事があるって言ってるだけだ」

「なんか・・・誤魔化してませんか?」

「あのな、ハーリー」

サブロウタは少し真剣な顔に為り、ハーリーを見た

「なっなんですか?」

ハーリーは少し怯みながらサブロウタを見た

「早く女作れ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「サブロウタ〜さ〜ん〜」

「何だよ、大声出すなよ」

「あのですね。ぼっ僕には僕には決めた人が」

「はいはい」

サブロウタは呆れながら席に戻った。

「うううう」

「ハーリー君、五月蠅いです。艦内では静かにして下さい」

「あ、はい」

うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん

心の中でハーリーは叫んでいた

「さってと俺も人の事言えないけどね」

そうしてサブロウタは少し艦長とハーリーを交互に見た

「・・・・似合わないんだよな・・・ハーリー」

哀れ、マキビ・ハリ・・・

「ハーリー君、そろそろ皆さんを集めるので手伝ってくれませんか」

「あ、はい」

ルリはアキトやカイトの事を置いておいて、仕事に取りかかった。今すべき事、それはまたナデシコBにみんなを集めなければならなかった。

ネルガルが決めた事・・・ですか。裏があると言っていいでしょうね

そしてナデシコBはこれからまた始まる悲劇に飲み込まれていく。それは変わらない事実だった









ユーチャリス格納庫



「グラビティキャノン・・・・かつて絶対に無理と言われたエステバリスにグラビティブラストを圧縮して背中に取り付けた機体・・・」

カイトは疑問に思っていた。これにミスはないのだろうか。かつて誰もしなかった事をヤマサキはした。もししたとしても、それは限りなく成功には為らない。それは今の時点でグラビティブラストをエステバリスに付ける事は不可能なのだ・・・・

「必ず・・・何時か副作用が起こる・・・これはあまり使わない様にしないとな・・」

そうしてカイトはシルバーエステのセッティングに取りかかった。弾丸を装着させ、フィールドランサーαの斬れ味を確認。

「やはり、連射系の武器がないと辛いな。かといってライフルを持つとフィールドランサーαが使えない・・・ハンドカノンも使えないな。肩に装着すればグラビティキャノンが使えないし・・・・うーん」

「カイト、何やってるの?」

「エステの調整さ」

「そう」

ラピスはシルバーエステを見上げる

「綺麗・・・・」

「そうかい?別に悪趣味な機体だと思うけどね」

「綺麗だよ。ブラックサレナよりも・・」

「そうかな・・・」

カイトは作業を続けた。ラピスはそれを邪魔にならない様に端によりその作業を見る。

「ここがこうっと」

「・・・・・・・」

「なあ、ラピスちゃん」

「何?」

「アキトさんがブラックサレナを整備してた時もこうやって見てたのかい?」

「ううん。邪魔だって言われた」

「そうか」

「うん」

考えてみればこの戦艦にはラピスとカイトだけだった。整備は結構な時間になるまで続く事は明白である。にも関わらずラピスはカイトの作業ずっと見ていた。

「なあ、暇じゃないのかい?」

「別に」

「ならいいんだけどね」

カイトは最後の仕上げのグラビティキャノンに弾丸を装着した。

「よし、終わった」

「お疲れさま」

そうしてブリッジに戻ろうとするカイトだが後ろからラピスが着いてきていないを確認にすると格納庫の中を見た

「どうしたんだい?」

「え、なんかね・・・この機体、綺麗だけど・・・怖い」

「そうだろうね」

カイトは同意する様にラピスとシルバーエステを交互に見た。これは僕専用の機体。復讐者の証の機体・・・

「さあ、戻ろうか」

「はい」

そうして二人はブリッジに向かって戻った。




カイトは変わる。姿を白に変えたときだけ別人のように

カイトは変わる。その服を脱いでしまえば昔と変わらない青年に

カイトは変わる。まるで鏡の中に居る自分自身の様に

だけどこれだけは変わらない。カイトは・・・・カイトなのだと









どうも、闇光でーーす。如何でしょうか? 第4章 過去と今の鏡の中で

まあ、暗くはあまりならなくなりましたね。それにしても私・・・・暇人丸出しだな・・・このままでは電気ががががが_| ̄|○

しっ失礼。少々取り乱してしまいました。ちゃんと働いてますよー。ソレハモチロンデスヨー。

さってと今回のゲストは・・・居ません・・・ああ一人です。嬉しいです。何か嬉しいです(つωT。

では、挨拶はこのへんでまた感想をお待ちしています。でわまた〜〜〜( ´・・`)ノシ



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