機動戦艦ナデシコ    〜忘却の白銀色の戦士〜
 

                                  運命って言葉、信じますか?
                                 
                                僕は信じる事が出来ません

                                なら信じる事ができるのはなんですか?
                         
                                分からないけど信じるものはあるよ

                               ならどうして、運命を信じないのですか?

                                それが定めって感じる事があるからだよ・・・・

                             
                         
運命は自分で切り開くものって信じてるから信じないんだ






                   第2章  大切な家族と2人目の白い妖精







ユーチャリス艦内


目の前にはアキトがバイザー越しにカイトを見つめていた。その横には白い女の子が同じように見つめている。カイトは静かに話し始めた。

「さって・・何処から話せばいいのかな?」

「お前が木星プラントで爆破した所からだ」

「分かった」

そして僕は話し始めた。木星プラントで自爆する直後にヤマサキに連れ去られた事。

火星のプラントで実験を受けながら2年間そこで眠っていた事。

目覚めてヤマサキ達を殺して、プラントから逃げた事

「おい」

「何、アキトさん?」

「あいつはどうしたんだ?」

「イツキの事・・・ですか?」

「そうだ」

カイトは懐から薬を取り出した。

「これが・・・・イツキです」

「・・・・・どういう事だ?」

アキトは睨みながらカイトに質問した

「これがイツキ・・・いえ、イツキだった。そして僕の体の中にもイツキは居る」

「なんだと、詳しく話せ」

「イツキは、・・・僕の改造実験の為に僕の体内に組み込まれた。そして僕はそのせいで体はボロボロらしいです。自覚はないんですけどね」

「そんな、馬鹿な」

「真実です。それにこの薬はイツキとのナノマシンの波長を完全にする為に補う役割を持った薬らしいです。元々違う人間のナノマシンですから、当然ズレはあります。それを合わせる為のも・・・の・・・です」

物、イツキと僕はこの言い方嫌っていた。自分達は道具じゃないと言っていたのに・・・それでも今ではこんな表現しか出来ない自分が情けなかった。

「この薬の量はせいぜい1ヶ月です。その間だけ、僕は生きること出来ます」

「生きる・・だと?。貴様まさか」

「はい、僕はこの薬が切れれば死にます」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

アキトは愕然とした。同じ境遇、いやそれ以上に酷い者が目の前にいる。それと同時に大切な家族だったものがこんな事になったのが

「・・・酷い」

今まで黙っていたラピスが初めて口を聞いた。それはアキトの精神を通してなのだろう。目からは涙が流れ始めていた。それほどまでにアキトはショックを受けていたのだ。

カイトは全てを話終えて、少し吹っ切れた様に近くにあった椅子に座った。

「別に後悔は・・・してません。元々死ぬつもりでした。それがちょっとした事で生きる事になったんです」

「カイト」

アキトはカイトの前に来るとバイザーを外して、平手打ちした。力は入っていなかったのであまり痛くはなかったが、頬が熱くなった。

「いっ、何をするんですか?アキトさん」

「俺がその言葉を吐いてもいいが、お前は違うだろ!」

「・・・どういう事ですか?」

「お前は生きなくてはいけないんだ。あの子は・・・ルリちゃんはずっとお前を待っているんだぞ。今まで何があったか今度は俺が話してやる」

そう言ってアキトは語り始めた。自分が5感を無くした事、隣に居るラピスが自分の5感のかわりだと言う事、ナデシコと共に火星の後継者を壊滅させた事、その時にユリカさんを救出した事

今は火星の後継者の残存部隊を根絶やしにしている事。

「俺は昔とは違う。沢山の人を殺した。それに見ろ、こうやって怒れば光る、まるで漫画みたいにな」

「だから・・・何ですか?」

「なに?」

カイトの言葉にアキトは更に怒りを覚えた、昔のカイトならこんな事は言わなかっただろう

「だから、何ですか?」

カイトは同じように呟いた。

「貴様〜〜〜」

アキトはカイトに向かって殴りかかった。止める事もなく、カイトは殴られるままに殴られていた。

「はぁ・・・はぁ・・・、お前に何が分かる。
こうやって復讐に身を置いて帰る事も出来ない。俺の気持ちが分かるのか?

「分かりませんよ・・・。アキトさん。僕は貴方じゃないんだ。」

そう言ってカイトは口から出た血を拭いながら、立ち上がった。

「けれど、貴方にも待ってる人が居るじゃないですか!!。それに貴方は生きていけるじゃないですか!」

「ぐっ・・」

そう言われるとアキトは言い返す事は出来なかった。5感を失っても生きていくことが出来る自分と1ヶ月しか生きれないカイト・・・。

それを考えると自分の考えていた気持ちが急に小さい事に感じた。

「だから、帰りましょうよ。帰れないんじゃない。帰りたくないだけでしょう」

カイトはそう言って優しく微笑んだ。昔の様に

「駄目だ。俺は復讐者。帰る事なぞ、考えていない。ユリカだって今の俺を見れば幻滅する。それに5感だって無い。今更ラーメン作る事だって」

「彼女がそんな事する様な人ですか。ラーメンだって5感戻れば作れるじゃないですか」

カイトは昔と同じ様に振る舞ってアキトを説得し始めた。

「イネスさんやみんなに頼めばきっと5感だって治ります。絶対治ります。僕はそう信じています」

「無理だ・・・俺は昔と変わったんだぞ」

「変わってないじゃないですか?。僕の頬を軽く叩いてくれた・・・。ラーメンを作りたいって思ってる。何処が変わってるんですか。ラーメンまた作って下さいよ」

カイトの言葉にアキトは暖かいものを感じた。

「・・・・・・・・俺は帰っていいのかな?。ラーメン作ってユリカと一緒に居ていいのかな?」

「アキトさん。帰りましょう」

その言葉が衝撃的だったのだろうか、それとも待っていたのだろうか。アキトの瞳からは久しぶりに涙が流れだした

待っていたのだと思う。だれかがこうやって優しく帰ってきてって言うのを。待っていたんだと思う。ラーメン作ってと言ってくれる事を

「カイト・・・有り難う」

「アキトさん」

そうしてアキトは優しく涙して微笑んだ。あの時の屋台を引きながら一緒にラーメン屋をしていた頃と同じように

カイトも微笑んだ。昔と変わっていない大切な家族がそこに居たのだから

「・・・・・アキト」

ラピスは複雑な心境だった。自分の知らないアキトが目の前にいたから

そうしてユーチャリスは一度、地球へ向かう。故郷に帰る様に




しばらくしてアキトはカイトにこれから先の事を聞いた。

「おまえはこれからどうするんだ?」

「僕は・・・アキトさんのかわりをするつもりです」

「俺の・・・かわり?」

「ええ、火星の後継者の残存部隊を倒します」

カイトはそう言って真剣な顔をした。アキトはその意志の堅さを感じたのだろう。一言も喋る事は出来なかった

「気にしないで下さい。これからは僕があいつらに復讐をするんですから」

「馬鹿な事を言うな。お前が復讐なんてする必要ないだろう」

カイトはアキトの言葉を聞いて、髪の毛で隠れていた。金色の瞳を見せた

「その・・・目は」

「!!」

ラピスは反応する様にこちらを見た。同じ金色の瞳が目の前にあるのだ

「研究のせいでこうなりました、両手にも」

そうして手袋を外してアキトに両手を見せる。

「IFSタトゥが・・・二つ?」

「普通なら考えられないでしょ?」

そう言ってカイトはラピスとアキトを見た。その顔は何か悲しい様な困った様な表情だった

「いいんですよ。それに復讐の理由はちゃんとあります」

カイトは宇宙の星空を見ながら呟いた

「イツキを殺したあいつらに。・・・そして僕の死に場所を奪ったあいつらに」

「カイト・・・・」

アキトは複雑だった。さっきの様に頬を叩ける様な事は出来なかった。カイトはそれほどまで死に執着していた。

「ならどうして・・・死なないの?」

急にラピスがカイト質問を投げかけた。カイトはちょっと驚いたが冷静に答えた。

「僕の中には、イツキが居るんだよ。だから自分で死にたくても死ぬことは出来ないのさ。だったら薬が切れるまでの間にイツキを殺した奴らに復讐しようって思ったんだよ」

「本当に・・・貴方は死にたいの?」

「そうだよ・・・きっとそうなんだよ・・。カイト、いやミカズチはね」

「そうしてまた星空を見つめていた。アキトは自分が何も出来ない事に苛立ちを感じていた。

「なあ、カイト」

「うん?なに、アキト?」

「俺の味覚が治ったら・・・・・一番にラーメン食べに来てくれないか」

「・・・・出来たらね」

カイトはそうして微笑んだ。しかしアキトはこの言葉を後悔した。1ヶ月に味覚が取り戻せる可能性はない。でもカイトは微笑んだ。それがどうして
も、むしょうに・・・・悲しかった。

「・・・・・・・・・・・・・・・」

ラピスはカイトに感じかけていた。アキトよりもそして自分よりもこんなに悲しい人は居ないと感じていた。

「ルリちゃん・・・・」

アキトが不意に思い出した様にルリちゃんの名前を呟いた

「ルリちゃんはどうするんだよ?。あの子はずっとお前を待ってるんだぞ。あの時から約束をカイトさんは守るからって、ずっと」

「・・・・・・・・・・・・・約束は・・・・守るよ」

カイトはそう言って立ち上がり、ユーチャリスの廊下に出た

「約束を・・・・守るか」

カイトは約束をした事を後悔した。自分がこんな事になるとは思ってなかった。約束を初めて破ろうとしたから

「ルリちゃ・・・ん」

カイトは廊下で泣いていた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ラピスはそれを覗きみるように小型ウィンドウでカイトを見ていた。

そうしてユーチャリスはネルガルのドック基地着いた。




ネルガル会長室

「う〜ん。エリナ君、コーヒーのお代わり」

「あのね、会長。そういうのは私じゃなくて別の人間にさせてくれないかしら」

「そんな硬い事言わない〜」

「まったく、どうかしてるわ」

そうしてエリナはカップを握って会長室から出た。

「さってと、さっき入った報告書を見るか」

アカツキはそう言うと報告書に目を通した。

エリナが入ってきてアカツキの机の上にコーヒーをおいた。

「どうぞ、」

何やら怒っている様子だ

「有り難うね。っと。えっと、なになに、ユーチャリスがネルガル5ドック基地に不時着っと

アカツキコーヒーを口に含むといきなり

「・・・・・・・・ぶっ」

アカツキはコーヒーを吹き出した。ガラにもなく、そうガラにもなく。それだけ驚いたのだ

「エリナ君」

「はい」

アカツキは慌ててエリナを呼んだ。

「帰ってきたよ。彼が帰ってきた」

「はあ?彼って?」

「何いってんの。テンカワ君だよ。テンカワ君」

「ええっ、会長。ほんとうですか?」

「どうやら、ネルガル5ドック基地にいるらしい。早く迎えにいくぞ。それとユリカ君にも連絡入れてくれ。今夜は赤飯だ。赤飯」

会長って・・・こんなキャラだったかしら?

そうしてアカツキとエリナはネルガルの5ドック基地向かった。





ネルガル5ドック基地



「アキト、カイト。ネルガル基地についたよ」

そう言ってラピスはカイトとアキトの方を向いた。

「なあ、カイト?」

「なに?アキトさん?」

「似合ってるよな?。久しぶりに袖通したからな〜」

「なんか僕がナデシコに乗ってきた時と変わりありませんよ」

「そうは言うけどな。久しぶりなんだぞ、この服」

そう、アキトは昔の黄色い戦闘用服を着ていた。まるでナデシコに乗っていた頃の。この提案はカイトが言ったのだった

「昔に戻るなら今の服を着替えようよ。形からって言うでしょ」

その一言である。

一方カイトの方はあの黒い服の色違いの白い服を着ていた。これはあの火星プラントの時の服は血がついて着れなくなったので処分したのだ。
この服はアキトの黒い色を落としてしまったと言った方がいいだろうか・・・目を隠す為に白いバイザーもしていた。

「取り敢えず行くよ。アカツキさん達が外にいるだろうし」

「あっああ」

アキトは何故か緊張していた。その表情を見るととても会ったときのアキトとは比べものにならないほど澄み切っていた。

やはり・・・アキトさんはこうじゃないとね

そう思いながら、カイトはアキトの肩を叩いて、歩きだした

ラピスは何時の間にかカイトの隣にいた。

「あれ、アキトさんの隣じゃなくていいの?」

カイトは疑問に思ってラピスに聞いた

「別に、いいの」

そうしてユーチャリスから久しぶりに地球に降りた。


帰ってきた故郷、一人は嬉しそうに、一人は何も思わず、一人は悲しそうに

それが何を意味するのか・・・

これからが本当の復讐の始まりだった









どうも、闇光です。如何でしたか?。第2章 大切な家族と2人目の白い妖精

「何だ、やればできるじゃん。何も考えてないっていいながら」

おや、アキトさん。すっかり明るくなりました。

「ああ、これもカイトの御陰かな」

いや〜よかった、よかった。アキトさんはやっぱりこうで無くちゃ(つωT。

「いや、それにしてもこれからの事考えてるの?」

ギク・・・・・・・

「・・・・・・・・・駄目じゃん」

いっいや、乗れば書けるんだよ。今日だけで1章と2しょ(バキ)

なっなんばすっとですか;;

「作者がどれだけ暇かって言うのを防いだんだけどね」

・・・・・・・_| ̄|○

「さってこれからも皆さん、辛口感想よろしくね」

作者の私って・・・私って_| ̄|○




[戻る][SS小ネタBBS]

※闇光 さんに感想を書こう! メールはこちら SS小ネタ掲示板はこちら


<感想アンケートにご協力をお願いします>  [今までの結果]

■読後の印象は?(必須)
気に入った! まぁまぁ面白い ふつう いまいち もっと精進してください

■ご意見・ご感想を一言お願いします(任意:無記入でも送信できます)
ハンドル ひとこと