「あたし?あたしは……あたしはアキトが大好き」
「はじめて聞いた」
一つの花は一つの愛を愛でる
「うそぉ」
「ホントだよぉ」
辿り着くまでの道のりは長く辛くても
「うそ」
「ほんと」
辿り着いた先の幸せは……咲き乱れた花のように美しい
「ウソォ」
「ホント」
「うっ…」
口付けに交わされた思いは深く……それを表すかのように光は集まる
幼い頃、火星の広い草原で初めて二人の唇を重ねあわせたときのように………
それは優しく……暖かく……色んな物を包み込むようなものだった
機動戦艦ナデシコ〜 The blank of 3years 〜
空白の瞳の中に映る人達
―― 第一話 運が無い人 ――
機動戦艦ナデシコの展望室
そこには白衣を着た女性…イネス・フレサンジュとオモイカネのコントロールシートに座る、少女…ホシノ・ルリがいる。ウインドウに映る二人の姿を見ながら指示を出している
ウインドウ越しに見えるアキトとユリカの姿を微笑ましげに見ながら
「イメージして……火星軌道…太陽の反対側へ……」
ルリも言葉を繋げる
「ボソンジャンプフィールド発生…安定しています」
アキトとユリカの乗る空戦エステバリスは光を放ちながらナデシコへ、と降下をはじめる差し詰めこのエステバリスは案内人とでもいうべきであろうか……
「どうしたの?ホシノ・ルリ」
ルリはアキトとユリカの姿を見つめながらボーっとしていた
作業しつつも、イネスが話しかけられて我を忘れていたため、戻る時にすこし動揺してしまった
周りから見ればいつものポーカーフェイスだったであろうが、そこにはほんの小さな動揺が生まれていた
「座標……固定します」
戦闘中だったパイロットの皆もナデシコに帰還していく、戦闘のためパイロット達の空戦フレームはかなりボロボロになってはいたが…みんなどこか満足そうな笑みを浮かべていた
皆が皆あの二人を祝福しているかのようだった
ゆっくりとアキトのエステバリスを中心に展開しつつあるボソンフィールド
そのフィールドにナデシコはゆっくりと吸い込まれていく
そして…ナデシコは飛んだ……火星からいちばん反対側の軌道上へ
「ルリちゃ〜ん、あたしの代わりに点呼とってぇ!」
ユリカがアキトのエステバリスのコックピットから能天気な声でルリに呼びかける
繋ながれた手……ふたりは幸せそうに微笑んでいる
「点呼、ですか?」
コックピットにルリの顔が現れる
「そっ、前にならえ!いち!」
「に……」
ユリカの声に続くアキト。心なしかユリカのように少し能天気だ
「……さん」
ルリもふたりに、しぶしぶ続いた
「なぁにぃぃぃ、ひとり多いだぁ〜」
ウリバタケ・セイヤの声が響く。この人が叫ぶのはあまり珍しくはないが
「提督を数え忘てるとか」
「オモイカネは、そんなばかじゃないです」
アオイ・ジュンの意見を即座に否定するルリ。この旅で幾分か人間らしくなったオモイカネも自分の意思を表すように『そうだそうだ』とか『艦長じゃないからそんなミスはしない』などというウインドウが現れている
そんなウインドウを見ながらジュンはついつい苦笑してしまう
「それでその侵入者っていうのは何処にいるのルリルリ?」
ハルカ・ミナトが、オペレーター席に座るルリに問いかける
「もしかして木星の人の工作員とか、そういうのじゃありませんよね」
メグミ・レイナードが不安げに聞いてくる
「たぶん……いえ、絶対違うと思いますよ」
ルリがコンソールに両手を当てながら、いつもの冷静な声で二人の疑問に答える
その中には半ば呆れているような感じもした
「「どうして!!」」
ミナトとメグミの声が重なる、ルリのその絶対までの自信はどこからくるのかわからすに、ブリッジにいる者も緊張と不安で表情が硬くなっているのがわかる。そんな中ルリはオペレーター席をゆっくりと立ち上がって答えた
「だって、その人…そこで寝てますから……」
「「「「「「はぃぃ!!!」」」」」」
ルリの指差した方向、ブリッジの隅にはうつ伏せで寝ている青年が一人……幸せそうに鼾をかきながら寝ていた
ブリッジにいたルリ以外の人達全員が自分の目を疑った瞬間だった
「ほんとに……寝てますね」
ブリッジにいたジュンが『それ』をみて呆れている。近ずいて見ると鼾のみならず鼻提灯まで出しているほどの爆睡であることがわかる
「う〜ん困りましたなぁ。起きて下さらないと取り調べもできませんし」
プロスペクターが『それ』をどうしようか愛用の眼鏡を中指で上げて考えている
「なら起こせばいいじゃないの」
エリナ・キンジョウ・ウォンが『それ』を見ながら、言う。彼女もジュン同様呆れている様子
「それもそうね」
興味本位でついてきた白鳥ユキナが、横から口をはさむ。彼女はスタスタと口で擬似音を出しながら『それ』に近ずいていく見るものが恐怖を抱くような小悪魔的な笑みを浮かべて。その顔を見てジュンの背中に嫌な予感と共に悪寒が走る
「ユ、ユキナちゃん…何をするつもり?」
「……こうするのよ」
瞬間ユキナの目がキラーンと光ったようにジュンは思えた…その直後である
ズドム
「はぅ!!!!」
ユキナの鋭い蹴りが『それ』の腹部へとのめり込む。規則正しく出ていた鼻提灯は消え、鼾をかいていた口からは肺の中に入っていた酸素が苦痛を表す声と共に吐き出された
ブリッジには苦痛に歪む顔と驚愕の表情をしている顔、悪戯が成功した時のような顔と相変わらずポーカーフェイスのままの顔の四種類に別れた
「ユユユユ、ユキナちゃんなんてことを!!!」
「えーーーーでも木蓮に居たときはこうしてゲンイチロウやサブロウタをこうして起してたんだよーーこのくらい(多分)大丈夫だよプンプン」
両手を腰につけてプリプリ起こるユキナは自分が何か悪い事でもしたんか!!という感じであった。ちなみに鋭い蹴りの直撃を受けた『それ』は腹部を抱えながら未だに苦しそうにもがいている
「ま、まあとりあえず目が覚めたようですな」
話題を変えるために標的をユキナから『それ』にプロスペクターは移す。そうすると皆も無言でユキナから『それ』に目線を変えるのであった。案の定まだもがき苦しんでいる
「これから尋問をしようかと思っていたのだが…………」
「と、いうより。これでは喋りたくても喋れませんね」
「もしもーし大丈夫ですか?」
もがいている『それ』を見ながら呟くゴート。淡々と語るルリの言葉は『それ』の状態を的確に表していた。そして心配そうに『それ』に質問するメグミ。うずくまって座っている『それ』は首を上下にカクカク動かして反応する……がどこかその姿は痛々しいものであった
その後少したった後に『それ』は深呼吸を三回し、食堂からやってきたホウメイが持ってきたお茶を飲んでやっと復活をはたした
「すみません。なんかご迷惑をお掛けしちゃったみたいで」
湯飲みに入ったお茶を全部飲み干した『それ』は自分を見ている人達に向かって謝罪の言葉を発した。痛々しくも未だにお腹をさすっている。そうとう痛かったらしい
「いやいや。こちらこそ行き成り蹴りなどを喰らわしてしまいまして申し訳ない」
プロスペクターが代表のように前にでて誤る。その後…眼鏡の奥が怪しく光るのは誰にも分からなかったが
「ところで……ぶしつけながらもあなたはどちら様で??」
愛用の眼鏡を中指で押し上げて質問をするプロスペクター
「僕……ですか…僕は……あ……え?…なに……」
急に頭をながら『それ』は困惑し出した。自分の入る所を確認し出すかのようにキョロキョロと辺りを見回し始め、自分のしらない所だと判断するとクルーの皆に聞いてきた「ここはどこですか?僕の事をしっていますか??」……と
その表情はものすごく寂しそうなものであったのは『それ』の顔を見ていた者達全てが一目でわかるほどだった。なによりも『それ』は必死そうだった
「プロスさんこの人は……」
「はい。多分間違いないでしょうな……」
………記憶喪失。二人の会話の終着点にはその単語が上るはずだがあえて二人はその単語を口には出さなかった。もしかしたら全てが演技で嘘かもしれない……というのもあるがなんとなく今はタブーのような気がして言えなかったのである
とりあえず……本当に記憶喪失かどうか、ドクターイネスの診察を受ける事になった
皆が見守る?中、イネスの実験……基診察が終わり『それ』の診察結果が今出ようとしていた。黙々とカルテに何やら書き込んでいたイネスだったが、顔を上げると手を叩きつつ振り返る
「オッホン…性別=男、健康状態は腹部の打撲以外は健康体、左目が赤いのは遺伝子上のことね…まあ結論から言うと、彼は正真正銘、記憶喪失ね。詳しく説明すると……」
「あの、イネスさん、ゴートさんも待ってますし、今は手短にお願いしたいのですが・・」
あわてたようにイネスを遮るプロスペクター。その顔は微妙に引きつっている。
「……まあ、いいわ。彼の症状は記憶喪失の中でも一番のお約束、個人情報のみが完全に失われている状態色々種類があるから一つ一つ説明して・・・」
「ドクター、お願いだから手短にしてちょうだい」
「んもう……、ここかがいとこなのに! 仕方ないからカンタンに言うけど、一般常識やら何やら社会生活に問題がないくらいの知識は残っているわ。でも自分に関する出来事、人物、その他の記憶はきれいさっぱり無くなってるの」
不機嫌そうな表情を浮かべたイネスだが、淀みなく手短に説明する。やはり説明となると他と大分違ってくる
「ということは、ドクター」
「そ、彼に尋問しても全くの無駄。時間を使うだけ無意味よ」
「案外さっきのユキナちゃんの一発で忘れちゃたのかも……」
「あ〜〜〜〜〜ん。それひどいミナトお姉ちゃん」
笑いが所々で起こる。場を和ませようと発したミナトの一言とユキナの突っ込みのお陰で先ほどの暗い状況からは抜け出せた。彼も少しだけ顔が綻ぶ
「でも誰かはわからなくても、どこの人かはわかるんじゃないの?」
「まあ確かに…木蓮の優人部隊の制服を着ているということは、木蓮側の人間ということになりますな」
その通りなのである。彼の着ている服の代表的な色は白……その服は紛れもなく木蓮の優人部隊の制服そのものであった
「いい所を突いた、といいたいけどそれは微妙ね…」
「どういうことです?イネスさん」
質問するジュンにイネスは『彼』を呼びその質問に答える
「まあ、実際見てもらった方が速いけど、これはオモイカネに見せてもらえば後でわかることだけど……彼が現れたのがナデシコがジャンプした時とするわ、そうすると木蓮側というにはフラグが立つけれど・・そうすると彼の右手にあるものが説明できないのよ…コレ、どう見てもIFSよ」
イネスが彼の右手の甲を皆に見えるような位置えだす。そこには確かにIFS独特の色と模様が描かれていた
「木蓮にIFSつけた人なんていないでしょ?」
「であるならば、実はこの方は地球側の人間と言うことでしょうか?」
「本人の記憶がない以上、確かめる術がないわ。ナデシコのデータバンクでは見つからなかったわ。今はこれが限界ね」
「あの………、ニ、三質問していいでしょうか?」
弱々しく声を出す彼。イネスは「どうぞ」といって話させる
「木蓮……ってなんですか?」
「ああ、通称木蓮、正式名称は木星圏ガニメデ・カリスト・エウロパ及び他衛星・小惑星・国家間反地球共同連合帯というものです」
「え?え、え木星圏カニメデ?は?え?」
「違う違う。木星圏ガニメデ・カリスト・エウロパ及び他衛星・小惑星・国家間反地球共同連合帯っていうのよ」
彼はブツブツとその名を口の中で繰り返し呟く。変な意地なのだろうか、正式名称を間違えずに言いたかっただけなのだろうが……そこまでしなくてもいいと思のだが。とりあえず息を大きく吸い込んで彼は言い出した。
「え〜〜と、木星圏ガニメデ・カリスト・エウロパ及び他衛星・小惑星・国家は
ぐっ!!!!!!」
「ど、どうした」
突然口を抑えながら座り込む彼に周囲の皆の視線が一気に集まる。しばらくたった後、彼に何が起こったかわからない周りに答えるべくロレツがあまり周らないなりにも彼は答えた。ものすごくバカらしいことを
「し……」
「「「「「し!?」」」」」
「しひゃかんひゃっいひゃした(舌噛んじゃいました)」
「「「「「はあぁ!!!」」」」」
皆が声を合わせて呆れるて言う。そんな中、舌を外気にさらさせようと出している彼を見ながらある少女はお決まりとも十八番とも言うべき言葉を言うのであった
「バカ……」と
「で、他の質問とやらはなにかしら記憶喪失君?」
あきれはててるクルーを尻目にイネスは舌がまだ復活していない彼に尋ねる。彼はイネスに、質問したい内容をロレツが未だ完全に回復していないため口で事を伝えられず、ブロックサインで伝える
サッサササッサッササッッサササササ
「なになに『ぼくのみぎてについているこのもんようはなんですか?』ですって」
首を上下にカクカ揺らす
「ああ、IFSのことね……そんなに知りたい?」
イネスの顔がイヤらしく歪むのに彼以外の全員が気が付いた。そう……彼女のこのような表情の後には必ずよいっていいほど『アレ』が発生するのである。不憫にも彼はその存在も恐怖も知らないのであった。そのためブロックサインでこう答えてしまった
サッササ
ぜひ。と
「ん〜〜〜ふふふふ。いいでしょうこのナデシコ医療班および科学班のイネス・フレサンジュさんが丁寧かつ細かくなおたっぷりと説明してあげましょう」
彼はブロックサインで「ありがとうございます」とサインをする……がそのサインが終わりあたりを見回すとそこには自分とイネス以外の人はいなかった。不思議そうに首を傾げる彼はこの後、なぜクルーの人達が黙って消えたかを実を持って知ることになる
医療室へと続く通路をアカツキは歩いていた。のんびりと歩いていると、視界に小走りで医療室から逃げ出すように出てくるクルーを見つけた
「あれ?みんなそろって何所行くんだい?」
小走りで出て行くクルーの一人であるジュンが立ち止まって、アカツキに逃げ出そうとしている訳を話す。アカツキには『説明』の単語が聞こえただけでなぜ皆が逃げ出そうとしたのか即座に理解できた。来た道を回れ右をして戻り出す
さきほどよりも歩く速度が少し速くなったかななんて思いつつもドンドン医療室から遠ざかっていく。歩きながら彼は思った「記憶喪失君に合うのは後の方がいいね」と…もっとも何もしらない人があの説明に耐え切れたらの話だが………………合唱
記憶喪失の彼はいまどこにいる?答えはブリッジ。たださきほどまでとはあきらかに違うのはその目は空ろになっているということである。…そりゃあ何も免疫のない人がいきなりあの説明喰らったら魂も抜けるだろう……
「よ、大丈夫」
他人の声で彼は現実世界へと戻ってくる。目の前には自分と同じくらいの背丈の青年が立っていた。明るい笑顔が好印象な青年だった
「あ、はい。なんとか」
「まあーーいきなりイネスさんの説明喰らったらそうもなるよな」
「はは……」
思わず苦笑してしまう。多分ここのクルー全員があの説明を喰らっているのだろう……そう彼は思った。でなければあの時逃げたりしなかっただろう。なんせ説明を聞いている最中、あの時のブロックサインで「ぜひ」なんて答えたのを思いっきり後悔したのだから
「そういえば…自己紹介してなかったな……俺は」
「テンカワ・アキト……さんでしょ」
「あれ?俺名前教えたっけ?」
「いえ……さっきIFSの説明だけでなくクルーの名前からこの戦艦の歴史まで丁寧に説明してくれたもので……」
「はは…そりゃご愁傷様」
「にしても……僕はここにいていいんでしょうか」
鎮痛な面持ちになる彼にアキトは「どうして?」と尋ねる
「一応密航者みたいなものですから…なのに平然とブリッジにいますし」
イネスの説明で自分がどのような形でナデシコに来たかを知った。ボソンジャンプと呼ばれる時間跳躍によって自分はこの戦艦ナデシコにやって来たという。どこから、どのようにして、という経過は不明だが……
ようは自分は密航者のようなものでこの人達にとってはイレギュラーなのだ。今ごろ、独房にいてもおかしくはない、いや、むしろいるのが当たり前だろう。だが、今自分はここにいる、それが不思議だったのだ
「ああ、いいんだよ。この戦艦は俺たちの艦なんだ。自分が自分らしくいられる所…そんなことは気にしなくてもいいさ」
「そんなもんですか?」
「そんなもんだ。第一ユリカが言っただろう?『あなたの身柄はこのミスマル・ユリカが預かります』って」
「まあ、僕としてはあの人が艦長というのに驚きました」
「……普通思えないよな」
二人は顔をあわせて笑った
「なに…記憶だってすぐに思い出せるさ」
記憶喪失である彼の肩をポンと叩き、アキトは再び微笑む。彼……記憶喪失君は少しだけ気持ちが軽くなった気がしたのを感じた
正直ここまで色々と張り詰めていたのだった。自分の記憶が無い事がわかり、何者であるか…何でここに来たのか……『自分』という存在の有無がわからなくなり内心ものすごく不安だったのだ。こういう言葉をかけて貰えて、彼は少しすくわれた気持ちになった
だがその時、ナデシコ艦内に警報と共に轟音が鳴り響いた。ミサイルか何かがあたったのだろうか…艦が多少揺れる。その揺れの中でクルーの顔がいきなり真剣になるのを彼はみた
「バッタ、及びジョロの群に遭遇しました。機影数十機確認」
オペレーター席にいたルリが今の衝撃の原因をのべる
「パイロットはエステバリスに乗って応戦してください。その他の人も所定の位置について」
さっきのおちゃらかな姿とは打って変わったユリカに驚きながらも、彼はクルーの邪魔にならないように移動する。ここで彼は実感した自分が今いるところは戦艦…戦う船なのだということに
射出された五機のエステバリスはバッタの群れと交戦となった。花火のように光っては消えるのは敵を表すものだということに彼は気が付くが数の割には少ない光だった。状況を表す言葉を言うならば苦戦・・・今までのバッタと同じようなものならば苦戦などしないで状況はいい方へと進んでいったのかもしれない。しかしこの状況下でのバッタの動きは違っていたのだ
読めぬ動きとあらぬ方向からの攻撃・・バッタの攻撃にドンドンダメージを受けていくエステバリス、逆にバッタの方はやられていても全体の4分の1程度……
そしてエステバリスから聞こえるパイロット達の反応
『なになに〜なんか動きが違うよ〜』
『なんなんだこいつらは!クソッ、ぜんぜんパターンが読めやしねえ!』
『嫁無いものは独り者・・・けっ』
けして良いとは言えない反応を出すパイロットによってブリッジは必然的に焦りの色が出てくる
「艦長このままだとまずいんじゃないんですか」
不安そうにいうメグミ、確かにこのままでは危険な状況だというのは誰にでもわかっている
「そんなこと言ってもナデシコには武装ほんとんどないんだよ〜アキト達にがんばってもらうしかないよ〜」
そんな中、カイトはずっと自分の右手の甲についているIFSをみていた。イネスの話だとこれはパイロット用のIFSだと説明してくれた。IFS……イメージ・フィードバック・システム、ようはパイロットの考えたようにエステバリスを動かせるようにするもの…理論上でならば彼のIFSでもエステバリスは動かせる
ドーーーー―ン
「アカツキ機、左足中破、テンカワ機も右手が使用不能」
「リョ―コさん!アカツキさん達を援護してください」
『できたらもうやってるよ!こっちもヤバイんだ』
エステバリスの被害状況を教えるルリの声が響く。他のパイロットの援護を叫ぶよう頼むメグミ。援護したくてもそれどころじゃないリョ―コ。そんな中、彼はもう一度自分のIFSを見る……
いまの彼には二択の選択がある
動くか……動かないか……
右手首の動脈を左手で探し脈を計って気を落ち着かせようとする。もしかしたら記憶を失う前の彼はこうやって緊張した時は落ち着こうとしていたのかもしれない…
目を閉じ思考を働かせる、迷っている時間は無駄だった……選択した行動を行うために格納庫へと走り出す…格納庫までの地図はさっき説明してもらったから頭の中にはいっている。道に迷うことはない
ブリッジでは彼が走り出たことに気が付いた者はいなかった
後書き
どうもブチめがねです
ここまで読んでくれてありがとうございます
The blank of 3years再構成
前にだした「戯曲〜」の前からということでやろうとしたんです
まだ名前がついていない彼はさっそく一話から運がないです
蹴られるわ説明されるわ……
ま、名前が犬からですから彼に運が無いのは必然でしょう
では第二話で