機動戦艦ナデシコ セカンドスト−リ−

無限の時空(とき)の中でみつけた、大切なモノ



―― カイトの日記 = 『ピ−スランド王国』 へ そのA ――





「ちょっと、遅かったですね。 何があったんですか?」


王様との謁見後、漸く二人と合流したのですが、会った早々のルリさんの言葉。


「王様から、ボクの "エステバリス" のことを聞かれたんで、つい話し込んでしまいました♪」


…嘘はいっていませんが、ボクがその会話の流れで、"騎士" の称号を授かった…

なんて、自分からはとても恥ずかしくて言い出す事はできませんでした。

でも、二人ともそれ以上は特に気にしないでくれたので、予定通り早速これから街に出かけることにしました。





『ピ−スランド』


…戦争時だというのに、ここだけがなんかチョット、変です……まぁ、『平和な王国』 なんでしょうけど…


って、ここに初めて着いた時も思いましたっけ?


というのも、この街には様々な建築物やお店…そう、世界のあらゆる文化が集まっているのです。





〜 大きな時計塔 〜 長い城道 〜 仏門や仏塔 〜 どっかの斜塔 〜



〜 ド○キ○−テの風車 〜 中○東の礼拝堂 〜 ??の通天閣 〜 オ○クの電器店 〜





ルリさんにみんなからの "お土産リスト" のメモを渡して、購入した荷物はアキトさんとボクが持つ事にしました。



「セイヤさんのスパナ」

「ホウメイさんの香辛料」

「イネスさんのクマさん」

「ジュンさんの腕時計」

「プロスさんの電卓」

「メグミさんのCD」

「ミナトさんのイヤリング」

「エリナさんの口紅」

「……etc…etc…etc……」



……アキトさんとボクは、どんどんと山積みとなっていくお土産箱を、フラフラッとしながら運んで歩きます。





……頼まれた買い物がほぼ済んだので、一度エステのツ−ルボックスに荷物を入れる為に王宮に戻ります。

王宮から御茶会に誘われましたが、今度はゆっくりと街の観光をさせてもらうため、丁重にお断りをしました。

そして今は街の様子を観ながら、三人で歩いています。










ふと …… ボクの目に留まったモノ …… おもわずボクだけ、そこに立ち止まってしまいます。


… いくつかアクセサリ−を売っている露天商 … 店主は女性の占い師のような … 神秘的な黒装束です …


そこには、煌びやかな輝きを放つ高価な宝石もありました。 … でもその中で、ボクの瞳に写るモノ …





――― 手の中に収まるくらいの黒い小箱 ―――







おもわずそれをひとつ、そっと …… 手にとってみて、箱を開けてみました ……





――― ひと雫の小さな涙のような形の … 透明な … 水晶のような … モノ がふたつ ―――







ボクが、それをしばらくみつめていると………



「… それは、ふたつでひとつのモノさ … おなじ輝きにみえるだろう? …


… それをはなしてしまうと、おたがい … ちがった輝きにみえてしまうという …


ふしぎないいつたえのあるモノなのさ …」



露天主の老婆は、いかにも "イワクありげなモノ" のような言い方をして、それについて語りはじめます。


その老婆の穏やかな語りを…ボクは不思議と素直に聞き入れていました。










「どうしたんですか?」

「急に居なくなるから、ビックリしたよ。」



不意に後ろから二人の声がかけられて、夢見心地だったボクは、現実の世界にもどされる。

そして、ボクはそれを四つ、お土産として購入しました。

ちょっとした、"思い出の記念品" ってところです。


"水の雫(しずく)" というモノを、ひとつずつに分けてもらいながら箱に入れてもらいました。

透き通った雫は、それぞれの色の輝きに染まります。


アキトさんに、赤い小箱。

ルリさんに、水色の小箱。

ボクは、黒い小箱。

そして … 白色の小箱は …


「これ、アキトさんからのお土産として、ユリカさんに渡しておきますね。(ニヤリ)」

「な…な・な・な…なんだよ、それって―――っ!?」

「あ…カイトさん…どうも、ありがとう……」


ってな感じで、みんなに渡してあげました。(黒い仔悪魔)




















「オ――ソォ〜レ・ミィ〜ヨ―――ッ!!!」



……とある 『ピ−スランド』 名物・五つ星・元祖… "ピザ" と "パスタ" の店……


「…元祖・本家って… "ピザ" と "パスタ" は…」

「イタリアの "ナポリ" です。」


うろたえ気味のアキトさんのコメントに、きっぱり答えるルリさん。


…あっ…コックのマスタ−おじさん……顔が変わった…


とにかく食べてみろ、とのことなので "ピザ" を一口かんでみました………こっ…これは!?


「…俺っ… "火星育ち" …だから、良くわかんないんだけど…」


どう答えたらいいか分からず、うろたえているアキトさん。


「不味いです。 それも、スッゴク不味い。」


はっきりといいのけるルリさん。



…… "ユリカさんの手料理" に比べれば…まだなんとか大丈夫だけど ……

…香辛料と、チ−ズと、オリ−ブオイルの使いすぎ…質も良くありません…ね。



逆切れしてしまった親方に、ルリさんが "まずい" 理由を淡々と説明しています。 …あ、やっぱり同意見。

こうなると、この後の展開としては………


「営業妨害だっ!! つまみだしてやるっ!!」

「やめろっ!! この娘に手を出すな。」


アキトさんが、怒りのあまりルリさんにつかみ掛かろうとした師匠の手を、寸でのところで止めたのですが……


…逆に師匠にボコボコにされてしまいます。


「テンカワさん!」

「アキトさん!!」


ボクが止めようと、そう叫んだ瞬間…先生の顔面に長棒(大しゃもじ)の先端にある鉄製部分が…直撃しています!?


……ルリさんが!?





「マスタ−ッ!」

「親方っ!!」

「師匠ッ!!!」

「先生っ!!!!」



…まずいっ! 店の奥から "増援部隊" の出現かっ!!…



ルリさんにいいよる男達との間に、アキトさんがなおも立ち塞いで、彼女を守ろうとします。





… "騎士(ナイト)" …





約束を思い出したボクは、無意識にアキトさんを頼ってしまったことに気づいて、自分に怒りを覚えました。



「ルリさん!! アキトさんを連れて、早くこの場から逃げてっ!!」

「!? あ、はい…!」



一瞬戸惑った彼女ですが、すぐ理解してくれたみたいです。 アキトさんの手を取ると、二人店から逃げ出します。



その後を追う一人目の足元をめがけて、勢いをつけた "水面蹴り" を放ち、転倒させる。

そのままの勢いで、ルリさんが使った棒を取って、二人同時に足払い。

残りの一人が、ボクの背後から襲ってきましたが…


…両手で臥せたままタイミングを見計らって…


つかみ掛かる瞬間に… うつ臥せのまま … 男の両脚の間をすり抜けて …


勢い良く壁を蹴ると同時に両手で床を支えて跳躍…


そのまま "背面跳躍踵落とし" を男の後頭部にきめると…



…脱兎のように店から逃げ出しました。



体格差も腕力も違う相手に真っ向勝負するわけにはいきませんから……

自分の空間把握能力と小柄な身体と俊敏さで勝負です。

ジョロやバッタに比べれば、"無表情な機械" となったボクにとっては至って読みやすい動作パタ−ンでしたから。

でも、街の中を逃げている間に、ふと…



… もしかしてこれって …食い逃げかなぁ…



と思った瞬間、何も無いのに突然こけてしまって、顔面強打っ!!





… 目の中の星がチカチカします …




















街の郊外の噴水広場で、漸く二人と合流できました。

アキトさんとボク、顔を怪我しています。


アキトさんはボクに、「大丈夫だったか?」 と心配して優しい声をかけてくれます。

… この怪我は、まさかころんだから …とは言えず、ちょっと笑いが乾いてしまうボク。


そんなボク達の顔をみて、申し訳なさそうにルリさんが謝ってきました。


アキトさんはルリさんに… お姫様を守るのが、騎士の役目だろ …やられっぱなしだったけど… と。


ボクは… ただ、なんとかうまく逃げてきただけです ……逃げ(迷うの)は十八番(おはこ)ですから… と。


それを聞いたルリさんは、少し落ちついてくれたみたいです。





「不味かったな、あの "ピザ"」

「この世のモノとは思えませんね。」


「ほんとです。 ユリカさんにも是非、味見してもらいたかったです。」





夜空の下で三人の笑い声が上がり、ボクたちの気持ちも … なんとなく … 一緒になったような気がしました。












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