機動戦艦ナデシコ セカンドスト−リ−
無限の時空(とき)の中でみつけた、大切なモノ
―― カイトの日記 = 『ピ−スランド王国』 へ その@ ――
ある朝ボクが格納庫に向かって通路を歩いて… ふと部屋の前に不審人物の人影を見たときのこと …
「…何しているんですか? セイヤさん。 ミナトさんにメグミさん…ヒカルさん。 イズミさん。 …それに、リョ−コさんまで?」
「し――っ! 今良いところなんだから、声を出すんじゃない!(ひそひそ)」
「カイト君。 ちょ〜と、静かにしててネ♪(ひそひそ)」
「お静かに!(ひそひそ)」
「今ちょ〜どいいところなのよ♪(ひそひそ)」
「…クククッ♪(ひそひそ)」
「お・俺は、別に…その……なんだ…?(こそこそ)」
「…はぁ…?」
セイヤさんなんか……どうやら扉に聴診器をあてて、部屋の中の会話を聞いているみたいだ。
『貴賓室』
… だれか、お客様でも来ているんでしょうか? …
しばらくだまって聴いているようでしたが、急に皆さん驚いたような顔をして、慌てて逃げ出してしまいました。
その場で呆然としまったボクを残して…
すると突然…扉が開くと…貴族風の黒い服を着た男性が出てきて、ボクと目があってしまいます。
「…? 何だね、君は?」
「おや、カイトさん…。 どうされました?」
髭をはやしたその男性が、目の前に現れたボクを訝しがるようにすると…
中に居たプロスさんが、冷静にボクの事をフォロ−してくれました。
…ボクが寝呆けて、迷仔になっていたのだと…
まぁ、実際は朝も早い時間だったし、ボクの無表情な顔は… 寝呆けているように見られても仕方ないですが …
『貴賓室』 の中には、ユリカさんとルリさんも居ました。
… ルリさんの様子がいつもと違うように見えたのですが …?
「「「「「 え―――っ!!
ルリちゃん
が、
『ピ−スランド』 のお姫様ぁ〜〜っ
!!! 」」」」」
… いやはや、ビックリしました …
皆が一斉に驚くのも無理はありません。
まるで、どこかの人の良い御隠居老人が、実は水○黄○様だったというわけですから…えっ、ちがうって?
とりあえず彼女、しばらくしたら 『ピ−スランド』 に行く事になるそうで…
… ルリさんが、お姫さま …ねぇ?…
不思議な雰囲気をもった彼女らしいといえば、彼女らしいんですけど…
まぁとりあえず、ボクは自分のエステの整備をしますんで、格納庫へ(迷仔になりながら)向かいましょう♪
…なんか、変です…
通り過ぎる人皆、ボクにメモを渡してくれて…
「たのんだぞ。 ちゃんと買って来いよ!」
… 格納庫に行けば解る、なんて言うんです …
ボクが食堂に迷い込んだら、ホウメイさんにも調味料と、変わった食材があったらよろしくとも言われましたが…?
… 補給物資をプロスさんにお願いしてくれ …ということなのかな?…
格納庫にやっと辿り着くと、プロスさん、ユリカさん、アキトさん、そして、私服姿のルリさんがいました。
…あ… コミュニケの受信 …OFFにしたままだった…
そこでプロスさんがいうには……
ルリさんは、『ピ−スランド』 に行く際の御供として、アキトさんを指名。 でも、それに反対するユリカさん。
では、カイトさんのエステ(ウィング・ライダ−)にアキトさんのエステ(空戦フレ−ム)を乗せて、
一緒に行ってもらう事にしましょう。 カイトさんのエステは、補給不要なので、経済効率も良いですし。
……との事。 でもプロスさんの表情は、それ以外にも理由があるような含みがみられました。
… さすがは、商売人 …って感じですね…
ユリカさんもそれでようやく、納得してくれたみたいです。
… ユリカさん …お土産買ってきますから、我慢して下さいね…(笑)
「 "ARU" 目的地のデ−タを "オモイカネ" からダウンロ−ド。
アキトさんの機体を "フライング・ボディ" に磁場固定したら、重力制御推進で発進。 …安全飛行でいくよ。」
「 "Yes、マスタ−" 」
IFSリンクを作動させて "ARU" に指示をだすと、目的地 『ピ−スランド』 へむけて、
『ナデシコ』 から発進しました。
[ …そういえばルリちゃん。 どうして御供に俺なんか、選んだの? ]
アキトさんのエステコクピット内で、同乗しているルリさんに質問しています。
[ お姫様(プリンセス)には、騎士(ナイト)がつきもの、だそうです。 ビデオで観ました。 ]
…なるほど… さしあたってボクは、"二人のお馬さん" ってとこですか …(とほほ…)
『ピ−スランド』
…戦争時だというのに、ここだけがなんかチョット、変です……まぁ、『平和な王国』 なんでしょうけど…
王宮内、謁見の間でルリさんの実の両親(王様・女王様)と弟(王子)たちが(みんな揃って)一斉に、
ルリさんとの感動の御対面となったのですが……
…アキトさんとボクは、その異様な雰囲気におされておもわず "ひいて" しまいます…
「…ここじゃない…」
…!? …どういう意味だろう…
ルリさん、やっと本当の家族に会えたのに、嬉しそうではありませんでした。
しばらく時間が欲しいという彼女…
… そうですね。 突然言われても実感できませんよね …
そして一度退出しようとした時、なぜかボクだけがその場に残るように言われました。
アキトさんとルリさんは、王宮に用意された部屋に案内されて、ボクも後で合流する予定です。
…不安です…
わざわざボクの側に来てくれたプレミア王が、先程までルリさんに向けていた明るい表情を変えて、
真剣な眼差しでボクの瞳をみつめています。
「そなた、…あの "ロボット" のパイロットであろう。」
「…は…はい…」
ボクの乗ってきたエステバリス "ウィングライダ−" の事だと思います。
「…そうか。 なるほど…」
「…あのぅ、恐れ入りますが…… それがなにか?…」
「いやいや、すまない。 そなたがあまりにも若いので、つい驚いてしまっただけだ。 どうか、気を悪くせんでくれ。」
そういう王様の目…とても優しそうにみえました。 ボクも緊張が少し解けてホッとします。
「いえ。 お心づかいをいただき、ありがとうございます。」
「ふむ。 思っていたよりも、信用できそうだな…」
「は?」
やはり、王様の意図が良く解りません。
「そなたに頼みたい事がある。 もしも、あの子…我が娘ルリが、王宮に残る事を拒んだとしたら…」
… ボクに説得をしろと!? …
「…そなたが、見守ってやってくれないか? あの子の行く末を…」
「へ!? ボ・ボクが…ですか?」
ビックリしました。 突然予想外のことをいわれたものだから、思わず声が裏返ってしまいました。
「いや、なに。 あの子がここに残ってくれれば問題はないのだが、それをあの子に強制をする事はできんからな。
戻らないといわれたら、それも仕方が無いと思っておる。 …だが、そなた達は戦場へ赴く事となろうからのう。
おぬしのロボットは、人を守る "盾" に見えたので、あの子を守ってやって欲しいとおもってな…」
… 王様の言いたい事が解りました。 だから、ボクの返答は …
「謹んでご辞退申し上げます。」
「なっ!? なんと申した、そなたっ!!」
王様は予想外のボクの返答に、期待を裏切られたような怒り顔になります。
「そなた、それでも…」
「私は 『ナデシコ』 というボクの居場所を守るために戦っています。 彼女一人の為に戦っているわけではありません。」
軽蔑するような王様の言葉を遮って、ボクはきっぱりと言い続けた。
「彼女が 『ナデシコ』 に居れば、ボクは力の限り守り続けます。 大切な "仲間" ですから。
でも、もしも彼女が王宮を拒み 『ナデシコ』 以外を選んだとすれば、それは彼女の意思なのです。
そこにはボクの居場所は …彼女が望まない限り… ないのです。 失礼ながら、これがボクの…お応えです。」
ボクは自分のこの時の本心を、すべてぶつけてしまいました。
…例え相手が王族であっても、権力者であっても…
立場も弁えずに言いたい放題の自分の返答を、王様は…
「…ふっ…ふふふ… いやすまん! 私の勝手な言い草であった!」
…てっきり、拘束されて牢屋行きかと思っていましたが…… さすがは 『ピ−スランド』 の国王ですね …
「すみません。」
「いや、気に入った! ルリがどのように行く先を選ぶかは、任せようといったのは私だ。
たしかにそなたの行き先まで私が決めてしまう道理はないからな。(愉快)」
「恐縮です。」
「では、改めてお願いしよう。 ルリが 『ナデシコ』 とやらに居る間は、必ず守ってやってくれないかな?
国王としての命令ではなく、これは一人の父親としてのお願いだ。」
「あ、はい。 微力ながら出来る限りの事はします。」
「よかろう。 ならば、我 『ピ−スランド国王』 の名の下に、そなたを
"白騎士"
として認めるとしようぞ!」
「ほへっ!??」
一体それってどういう意味なんでしょう? あまりにも突拍子もない展開に、ボクの頭は追いつきません。
「はっはっは。 今更おぬしの "呼び名" がひとつ増えたところで、どうということもないだろう!」
「 "呼び名" …ですか?…」
ますますわかりません。(???)
「あ…まぁ、そのぅ…なんだ…」
… ? …王様の態度が急に不自然となっています。
「うぉっほんっ! …この "称号" は、そなたに対する私の "信頼の証(あかし)" だと、思って欲しい。」
… "信頼の証(あかし)" …
その言葉が、ボクの心の中に響きます。
今まで自分を支えてきてくれた人々の顔が、ボクの心に思い浮かんできます。
「カイトよ… どうかな?」
… ボクの応えは …
「……ありがとうございます!」
気恥ずかしさもありましたが、素直に受け入れる事にしました。
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