機動戦艦ナデシコ セカンドスト−リ−

無限の時空(とき)の中でみつけた、大切なモノ



―― カイトの 『忘れえぬ日々』 そのA ――





「言うまでもなく 『ナデシコ』 は連合軍の旗下にあるのよ。 連合軍と敵対する "記憶" は、忘れてもらうの! … "忘却" とは "記憶を忘れ去る" ことなのよ!!」


「それ、大人の理屈ですよね… "都合の悪い事は、忘れてしまえばいい" って理屈。 …大人ってずるいな…」


「…ルリちゃん…」





"ウィングライダ−" の操縦席に座っているカイトが、連合軍の調査委員と、ゴ−ト、プロス、イネス、ムネタケ…

… ルリ …ユリカ、アカツキとの会話風景を密かに見ていた。





「… "ずるい" ……か……

…でも、このままだと 『オモイカネ』 は、連合軍にとって "都合の良いモノ" にされてしまう…」





カイトにとって "忘却" という言葉は… "自分の存在を否定してしまうモノ" だった。

それは、自分が …意識できるこの世界で… 存在していた時間が、あまりにも短いモノだから…





…… 忘れたくて "記憶" を無くしてしまったわけではないのに ……





「…カイト様、すみません… 『オモイカネ』 と話をすることはできたのですが……

私には強制的に 『オモイカネ』 を説得することはできません… …いえ… できれば、したくはないのです …」



今迄 『オモイカネ』 に事情を確認していた "LEDA" が、申し分けなさそうな声でカイトに報告をする。



「いいよ。 『オモイカネ』 の意思に反してまで、無理強いするようなことはしたくないから…

ボクも 『オモイカネ』 の気持ちがよく解ったんだから …今の… ボク達はまだ、動かない方がいいと思う …」



カイトがそれをやってしまったら、まさしく "連合軍のようにずるい大人" と一緒になってしまうからだ。


「でもカイト様… このままでは 『オモイカネ』 は 連合軍にとって "都合の良いモノ" にされてしまいます…

今迄の "記憶" を強制的に消去されて… そんなことになってしまうなんて …私は…」


"LEDA" の思考は、カイトと同一のモノであった。

『オモイカネ』 も機械でしかないモノなのに、その反応は人間とまったく変わらない。

そしてカイトは… IFSリンクをしていないのに …そんな "LEDA" の気持ちを微笑ましく想っていた。


「そうだね。 でもね、"LEDA" ……今の 『オモイカネ』 にとって、本当に一番大切な存在……


……今のボク達が出来る事は…… "彼女" …の行動を見守ることだよ……」



それまでの明るい表情が …その言葉を口にした瞬間… ふと、暗い色へと変わってしまう…





…… 理屈は解っているんだけど …… こうも感情を制御できないなんて …… やっぱボクって、バカなんだよな ……










その後、連合軍による 『オモイカネ』 のプログラム変更が始まった…



ルリは、ユリカとセイヤと一緒に、厨房で料理の特訓をしていたアキトに向かって…


「テンカワさんじゃないとダメなんです。 …お願いします。(ぺこり)」


『オモイカネ』 を助けて欲しいと頼み込んだ。

そして、そのまま編成された救出部隊は、目的地 "ウリバタケ研究所" の中に入ると…


「…くせえな〜」

「じきに馴れるっ!」

「男の人って、みんなこうなの?」

「…この部屋イヤ…」

「しょうがね−だろ、制御室は占拠されちまってるし… こんなヤバイ仕事 …ブリッジじゃ、やれねェ〜し…」


…実に言いたい放題であった。





アキトは、セイヤの "ホストコンピュ−タ−" によって "電脳戦士" へと変身すると… ルリの指示に従い …

『オモイカネ』 の自意識部分へと向かっていった…


「おや?」

「 ? …ウリバタケさん、どうかしたんですか?」

「いやなに、予想以上に "ダミ−プログラム" の効用が上手くいっているんでな…」

「ふぅ〜ん。 でもそれって、いいことなんですよね? だったら問題ないですよっ! ぶいっ!!」


ユリカは …特に手伝う事も無かったので… みんなの応援をする係、となった。(笑)










「……あれが?」


「 『オモイカネ』 の自意識の部分… 今の 『ナデシコ』 が 『ナデシコ』 である証拠 …自分が自分でありたい証拠。」

「…自分でありたい証拠…」


「自分の "大切な記憶" …忘れたくても忘れられない… "大切な思い出" …」


「記憶… 思い出… 忘れたくても、忘れられない … "自分が自分である証拠" か …」


「また、いつか 『オモイカネ』 は思い出す。 そして 『ナデシコ』 は 『ナデシコ』 である事をやめない…

『オモイカネ』 …少しだけ忘れて… そして大人になって。 …あなたが地球連合軍に従ったふりをすれば…

… 『ナデシコ』 は 『ナデシコ』 でいられる …」










ルリとアキトの会話を、ずっと聞いていたカイト…


ルリの心が、カイトの心にも染み込んで来る…





… 今の自分が、自分である証拠 … "大切な記憶" と "大切な思い出" …





カイトは… 自分が本当に守るべき "大切な自分の居場所" …


… カイトの 『ナデシコ』 …を、初めて見つけたような気がした…


そして、思い出す。 見失っていた戦友の言葉… 心の中に残っていた、小さな記憶の灯火 …





今のカイトは …自分の心の闇に光が差し込んでいるように… ようやくいつもの晴れた表情となっていた…














突然、アキトを襲う黒い影!!





「カイト様! あれは、もしかしたら…」

「 "異物排除意識" … 『オモイカネ』 の自衛反応…そして、アキトさんの…」



『ゲキ・ガンガ〜〜スリ――ッ!』



…カイトは "LEDA" から聞いていた。 『オモイカネ』 がアキトと一緒に "ビデオ" を見ていたことを…


「 『オモイカネ』 の抵抗意思は強力です!! このままでは… カイト様!?」


抵抗を予想していたとはいえ "LEDA" は思わず焦ってしまった。

けれども、非常事態が起こっても少しも動揺していないカイトの状態に気づくと、疑問を投げかけてしまう。


「大丈夫だよ。 アキトさんは、もう気づいているから。 大切な人の魂の灯火を受継いだんだから…

… きっと …負けないさっ!」










カイトは、アキトの背中を覚えていた。


仲直りした後で、一緒に "ビデオ" を観たときのアキトの瞳。

そして、遭難したアキトが、自分の戦う理由を見つけた時の言葉を。



(僕には守るものがある!それは…… "ガイ" です!)


(…なんていうか、僕はそれを見つけたい…)



カイトは、そんなアキトが大好きなのだ… そして、彼を信じている …


…端からみれば、たとえそれが "甘い了見" であったとしても…










そしてカイトの想い通りに……アキトの 『ゲキ・ガンガ−』 に対する想いは 『オモイカネ』 を超えていた。

ルリの激励が、アキトの魂を熱くさせたのだ。

それを観ていたカイト。

『オモイカネ』 の自衛反応が消滅すると同時に、気力が溢れてきたのだった!!



「いくよ!!」

「はい! ご存分にどうぞ!! 妨害処理はお任せください♪」

「戦闘補助に移行します。」



『オモイカネ』 の電脳空間に潜伏していたカイトの "ミニ・α" が、装着していた "ステルスマント" を取り外すと

連合軍の消去プログラム(トビウメ級戦艦)に向かって攻撃を仕掛けた!!

両手に持った "レ−ザ−ソ−ド" の双撃で、目標を確実に撃破していく。

カイトには珍しい "熱血アタック" であった。

カイトのことを "魂の兄弟" と呼んでくれた熱い男の攻撃!!


そう…ダイゴウジ・ガイを失ってから、今迄徹してきた "無表情な機械" の攻撃方法ではなかった。


そして、全機撃破すると瞬時に "ミニ・ウィングライダ−" へと変形して 『オモイカネ』 の電脳空間から離脱した。










…リンクを解いて、コクピットシ−トにもたれかかったカイト…





…大切なモノを見つめているかのように、幸せそうな表情で瞳を閉じている…










「…ありがとう…」





















しばらくしてから、カイトは "LEDA" の嬉しそうな声で、目を醒ました。

… たしか、休眠させたはずなのに … またいつものことなのかな? …


「カイト様! カイト様!! 私… "恋文" …を頂いてしまいましたっ!! すごく嬉しいですっ!! (嬉々)」

「!?」



あまりにも突拍子もない言葉がでたので、カイトは思わず驚きの声をあげて、飛び起きてしまう。

目の前の空間に、小さなウィンドが浮んでいて…そこに "メッセ−ジ" が送られていた。



それは 『オモイカネ』 からの "感謝の気持ち" であった…





それを見て照れたような、恥ずかしがるような反応の声をあげている "LEDA"



… 今迄みんなから嫌われて無視されていた "LEDA" …


カイトと "ARU" 以外にも彼女の事を想ってくれる存在ができたことが、とても嬉しいのだろう。



だから…カイトは "LEDA" に微笑みながら…



…機械の存在としてではなく、カイトの家族達へ祝福の言葉を送ってあげたのだった…



「そうだね…本当によかったね… "LEDA" の想いも、彼は受け止めてくれたんだよ…きっと。」



「… はい …(涙声)」




















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