機動戦艦ナデシコ セカンドスト−リ−

無限の時空(とき)の中でみつけた、大切なモノ



―― 作戦名 "幻のチキンライス" ――





―― 『ナデシコ』 食堂 ――





ルリと別れた後、カイトは早速 "夜食" を用意するために 『ナデシコ』 食堂へと向かった。

食堂に入ると、ちょうど営業終了の後片付けをしているところであった。

ホウメイに挨拶をしたカイトは、しばらくそのまま邪魔にならないようにテ−ブルに着いて待っていたが……

厨房から出て来たアキトがその姿に気づいて、カイトに声をかける。


「カイトくん、どうしたんだい? たしか今日は…もうすぐ "ブリッジ待機" だったよな? 俺と一緒で。(笑)」


アキトは …少し戸惑いながら… まるで "可愛い弟" を相手にするかのようにカイトに話し掛ける。


「ええ…まぁ、そうですけれど…」


愛想のない顔で返答するカイト。 … 無意識にまだアキトのことが苦手 …みたいなようだ…


アキトもそんな彼の反応をみると…ふと…ユリカの義弟というよりも、別の誰かに似ていると感じて戸惑うのだ。

まぁ、その彼女と会話すると誰に対しても同じ反応をするから、特に嫌われているとは思えないのでいいのだが…

カイトの場合… ユリカやジュンやセイヤなど …仲の良い人にみせる反応が、アキトの時とは明らかに違うのだ。


… もしかして、俺ってカイトに嫌われているのかな? …


最近、アキトはそう感じてしまうのである。



アキトはカイトが嫌いではない。 好感を持っている。 何度も自分の危ない所を助けてくれた、仲間なのだから…

だからアキトは、笑顔(アキト・スマイル)で、カイトに気をつかう発言をしてみた。


「じゃあさ… もしよかったら、今日の "夜食" …三人の分を俺が作ろうと思うんだけど… どうかな?」

「いえ、お構いなく。 自分の分は自分で用意しますから。(即答)」


カイトの返答は、いともあっさりである。


「あ…そう。(残念)」


アキトの笑顔が苦笑いと化す。





その二人の様子をさりげなく見ていたホウメイ。 やれやれ…といった顔で、二人の会話に入って来た。


「カイト。 あんた、せっかくの人の好意を、そう無下に断るもんじゃないよ。

アキトはお前さんのことを気にしてるんだ。 そういう時は、素直に受取るもんだよ。」


ホウメイは、むずがる仔供をあやすような言い方で、カイトにそう諭す。

それに気づいたカイトも、自分の仔供染みた態度に反省をする。


…ホウメイの前では、表情が素直に変わるのである。



「ごめんなさい。 テンカワさん。」



申し訳なさそうな顔で謝るカイトをみて、漸くアキトにも戸惑う気持ちが消えた。

そんなカイトの素直なところがホウメイも気に入っていた。


「…でも、ボクも料理を作るのは好きなんで… 喜んで食べてくれる人がいると …その…自分で作りたいんです。」


御統家で家事手伝いをしていたカイトは… 今度は照れるような顔で …断った理由をそう述べた。

それを聞いたアキトは 「じゃあ一緒に作らないか?」 と誘い、ホウメイも楽しそうな顔で 「やってみな」 と了解をする。

漸くカイトも、アキトに対する苦手意識が薄れて来たようだ。



「…そうですね。 それがいいかもしれませんね。」





アキトと一緒に "夜食" を作り始めようとした時 …ふと… カイトは気づいた事があったので、アキトに尋ねてみた。


「そういえばテンカワさん。 ホシノさんって、何が好きなんでしょう? 知ってますか?」

「そういやルリちゃんって、何が好きなんだろう… ホウメイさん、知ってます?」


アキトも知らなかったらしい。


「あ〜あの子は、ちょっと変わっていてね。 好き嫌いが多くて、あたしも困っているんだよ。」

「??」


ホウメイの返答セリフに、アキトとカイトは思わず "同じ顔" をする。



ルリの嗜好…



ホウメイから説明をうけると…


「それって、体に良くないじゃないですかっ!!」


アキトとカイト、また "揃って" 声に出す。


「ど〜しますか、アキトさん?」

「う〜ん、こ−なったら…」


…おやおや、二人とも急に仲良くなっちゃって…まぁ。(笑)


カイト達が先程とは違って仲良く息が合っているの見て、ホウメイは …ふふふっと… 笑った。





アキト&カイトの共同作戦始動!!





…作戦名 『ルリの正しい食生活改善料理・明日のために 〜その@〜』



「まずは、女の子の好きそうなモノを……ってなんだ?」

「…ボクに聞かないでください。 ボクは "男" ですから…」

「アタシにも聞かないでおくれ。 自分たちで考えるんだよ♪」

「……次、いこか?」





…作戦名 『ルリの正しい食生活改善料理・明日のために 〜そのA〜』



「ここはやはり、体にいいモノを…って、カイト…お前なら何だと思う?」

「み○も○たさんによれば "なんでも体に良い" そうです。 ネッ、"奥さん" ♪」

「悪かったね。 アタシゃまだ "独身" だよ!!」

「わわわっ!! そ・そういう意味じゃあなくて(苦笑)…」

「お前って、結構…命知らずなんだな、カイト。」

「何か言ったかい、アキトっ!!」

「わわわっ!! な・何でもないですっ! …はい。」










…… このあともいろいろと思考錯誤があったのだが、"制限時間" が迫って来たので、中途省略 ……










…作戦名 『ルリの正しい食生活改善料理・明日のために 〜そのJ〜』



「…もう、あとは…ないぞ…」

「アキトさん。 いっその事こうしましょう♪ …アキトさんは、何が好きですか?」

「へ!? オレの好きなモノかっ?」

「ユリカさん…とか、ゲキガンガ−…とか、メグミさん…とかじゃないですよ。(順番には、特に意味なし)」

「なな・何をいっているんだ!! オマエはっ!!」

「好きな "食べモノ" のことですよ〜(ニヤリ)」

「…オマエって、結構 "意地悪" なんだな。」

「はい♪」


「ははっ。 そうだな、オレは… "地球の食べ物" は何でも好きなんだが……」

「それでは、意味がないですが…」

「…まぁ "ラ−メン" が、最近は好き…かな。」

「あ、ボクも大好きです!! …でも、汁物は…ちょっとまずいかな?」

「あ、そうだな。(ブリッジでこぼしたりしたら、さすがにマズイ) …じゃあさ、カイトは何が好きなンだ?」

「それ以外なら "チキンライス" です。 ユリカさんにも "太鼓判" を押してもらいました♪(意味のない保証)」

「それならば、結構簡単にできそうだな。 よし! …でも、何で "自分の好きなモノ" を作ろう、と思ったンだ?」


「…絶対に、笑わないで下さいよ… …約束ですからね…


…自分が好きなモノを作る時、一生懸命になりますよね?…


…そして、それが他の人にも喜んでもらえたら… …ボクもすごく嬉しいから… …です…(赤面)」





アキトはカイトのその言葉を聞いて、微笑んだ。



「…オレも、そう思うよ。 コックのオレが目指している "気持ち" でもあるからな…」



カイトは、アキトの優しさを実感する。


いつのまにか "テンカワさん" が "アキトさん" に変わっていて…

… それが …自然な気持ちで呼べるようになっていたのだった。










―― こうして作られた "幻のチキンライス" は、ホウメイからみんなに伝えられて、ユリカを始めとする



"アキトファン" の女子から "オ−ダ−" が殺到するのだが ……… それはまた、別のお話 ――





―― さあ後は、ルリに "実食" してもらうだけだっ!! ――










――― なお、ブリッジ待機勤務で "夜食" を食べる行為は、通常に許可されたモノではありません ―――



――― クル−の一部で … 暗黙の了解の下 … 内緒でやっている行為 … だそうです ―――






















ルリ 「……参りました……」












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