『
撫子荘(なでしこそう)
』 一号室
〜 新入居者大歓迎!! 『
撫子荘
』 〜
ボクの名前は、
御統・快人(ミスマル・カイト)
。
この春から 『
撫子学園(なでしこがくえん)
』 に通う15歳の男子学生だ。
家族は、父・母・妹の四人家族だったが、今は訳あって一人で住んでいる。
ボクの住んでいる 『撫子荘』 は、父の親友である
瓜畑・星矢(ウリバタケ・セイヤ)
さんが
大家をしていて、そこの 『204号室』 をセイヤさんの好意で借りている。
父の実家よりもここからのほうが学校に通うのに良いし、なによりも、この町の雰囲気が好きなのだ。
『撫子荘』は築20年ほどの二階建。
貸家は、正面脇の一つ階段をあがった二階だけ。
六畳一間・キッチン・トイレあり・風呂なし・シャワ−ありという部屋作りで4室。
この "風呂なし" に関しては住民から賛否両論ありますが、その代わりに家賃が他よりも安くなっています。
一階は、セイヤさんの職場である 【
改造何でも屋『セイント』
】 の仕事場と彼の家族の住居。
「変わり者だが、いいヤツだ。」 という父の言葉どおり、セイヤさんはボクのことを良くしてくれます。
とても、面倒見の良い人です。
…けれど、少々お節介すぎて、
奥さんの織江(オリエ)
さんとはよく喧嘩していますが…
そういえば、ここの入居審査は "セイヤさんの趣味だ" と住人の誰かが言っていました。
『201号室』→
白鳥・九十九、雪奈(シラトリ・ツクモ、ユキナ)
兄妹
お兄さんの九十九さんは、この町のお巡りさん。
真面目で優しい人ですが、セイヤさんは 「話のわかるヤツだ。」 といってます。
好青年で格好いい、と町の人にも良い評判のある人です。
いろいろと問題のある 『撫子荘』 を、いつも懸命にフォロ−する九十九さん。
その気苦労の多さには、少し同情するモノがあります。
そして彼もまた、ボクのことをよく気にかけてくれます。
妹のユキナちゃんは、今度 『木連小学校』 の六年生になる、11歳。
よく 「年上が好き!」 といって、ボクと先輩のジュンさんをからかうのだけれど…
元気があって明るく楽しいとても良い子です。
彼女の 「年上好き」 は、きっとお兄さんのことが大好き、というモノだと思っています。
隣町にある実家に両親がいるのに、ここでお兄さんと二人で住んでいますから。
あと、子供扱いをすると彼女は怒ります。
ジュンさんとボクはこれで彼女に反撃しています。(笑)
「卒業したら、私も 『撫子学園』 の中等部に入る! うっしゃ――ぁ!!」 と宣言しています。
…入るのは大変だけど、がんばってね。 ユキナちゃん…
『202号室』→
遥・美奈都(ハルカ・ミナト)
、独身女性
ミナト先生は、ボクが通う 『撫子学園』 高等部の保健医です。
とても美人なので男子学生の憧れの的だそうです。
生徒からの相談を親身になって受けてくれるので、女子にも大変人気があるそうです。
ボクがこの 『撫子荘』 にきた時も、本当のお姉さんのように優しく接してくれました。
…でも最近はユキナちゃんと一緒に、ボクと九十九さんをからかって楽しんでいますが…
ちなみに 『撫子荘』 で彼女の事をボクが 『ミナト先生』 と呼ぶと、なぜか怒ります。
「ここは "学校" じゃないんだから、"ミナト" でいいのよ。」
あとは…昔、会長秘書をやっていたことがあるとかないとか?
「女性の過去は、謎であるほうが魅力的なの♪」 とも確か言ってたっけ。
少なくともボクの従姉弟のお姉さんよりも、落ち着いた感じがする大人の女性です。
『203号室』→
天野・火狩(アマノ・ヒカル)
、女子浪人生、19歳
一応予備校に通っているそうだけど、漫画を描いていたり、セイヤさんと一緒に悪戯をしたり、
この間も 『撫子荘』 の屋上で…
「「我が青春は 『我が趣味』 に懸ける!!」」
…なんて、二人揃って叫んだ直後にオリエさんにハリセンたたきにされていても、明るく元気なヒカルさん。
とてもユニ−クなお姉さんです。
ただ、ボクにコミケに出す漫画の手伝いを(無料で)させたり…
ヌ−ドモデルにしようとしたり…
突然部屋に入ってきては、手品をしたり…
…悪い人ではないとは思いますが…
ちょっと行動が読めないところがあります。
それと彼女は仕送りに困ると、よく駅前の飲み屋『
花目子(けめこ)
』で働きます。
…あっ! そういや、お金を貸していたっけ? こんど返してもらわなきゃ…
でも受験勉強しているところをあまり見た事がないんだけれど、大丈夫かな?
春休みが終われば、いよいよボクも晴れて『撫子学園』高等部の一年生。
…ようやく夢が一つ叶ったし、あとは…
「なにをボ〜ッとしてやがるんだ、カイト。 おまえさんも早く支度しろよ。 みんな待っているンだぜ!」
窓辺で夕暮れ風景をみていたボクに、いつのまにか部屋に入って来たセイヤさんが声を掛けてきた。
「づかづかづか…カイトちゃん。 …やっぱし、またいつもの
"ボケボケ仔犬モ−ド"
してたんだぁ!」
セイヤさんの後ろから部屋に入って来たユキナちゃん。
…ユキナちゃん、
"ボケボケ仔犬モ−ド"
って、ナニ?…
「おい、ユキナ。 勝手にカイト君の部屋に入ってはダメじゃないか。」
九十九さんが入り口の所でユキナちゃんを優しく叱っている。
「大〜丈夫よ、ツクモっち。 心配しなくてもカイトくんは、ユキ(ナ)ちゃんに襲ったりしないわよ。
だって、私達の
躾
が良いからね♪」
セイヤさんの隣で悪戯好きな子供の顔して、眼鏡を光らすヒカルさん。
…ヒカルさん、あなたって人は…
「でもぉ〜ユキナとできちゃえば…二人とも私達の弟妹よねぇ〜、九十九さん♪」
「「「
なっ!!!
」」」
ボクとユキナちゃんと九十九さんは、甘えた声で九十九さんの左腕にしがみついた、
ミナトさんの爆弾宣言によって、一斉に顔を染めて固まってしまった。
そう、いつもボクはこうして、彼等のおもちゃにされるのです。
ボクの存在は、まるで彼等の
ペットの仔犬
。
…チョット自己嫌悪…
動揺したボク達やそれをみて面白がる人達を、騒ぎを聞きつけて来たオリエさんが制し、
ようやくいつものノリが収まった所で、改めてセイヤさんが号令しました。
「じゃあ、そろそろ行くぞぉ〜 他のいつもの面子は現地集合だが… まぁ、先に飲っているだろうなぁ…
それとアキト達は先約があるそうで、残念だが今回はパスだそうだ。」
…そうか…そうすると彼等に今度逢えるのは、入学式の時だな…
ちょっと残念。 合格発表日以来で会えるとおもっていたんですけどね。
これから皆さんと一緒にお花見に出かけます。
ボクの合格祝いも兼ねてだそうで、とっても嬉しいです。
…でもボクは未成年ですから、先にクギをさしておかないと…
「
そうですか。 でもセイヤさん、今日ボクは飲みませんからね!
」
「「「「「 却下!! 」」」」」
…みなさん、即答ですか…(涙)
そんなこんなで、みんなと楽しく暮らしています。
今のボクにとって、とてもあたたかなもの。
大切なひとたち。
帰れる場所。
ボクの居場所。
この 『撫子荘』 に来たから、ボクは変われたのだと思う。
『撫子荘』 に住む人々と出逢い、大切な思い出ができたから…
桜舞う季節に『撫子学園』へ入学して、懐かしい人との再会、新しい人との出逢いを迎える。
ボクは、念願の学園生活に心高鳴る予感がしていた。
今まで以上に、想像以上に、楽しい毎日。
…この時のボクは、自分が予想した以上の出来事が待ち受けているとは思ってもみなかった…
…ようやくこの空気にも馴染んできたなぁ、と感じていた頃に…
――― 突然、ボクに 『運命の再会』 が訪れることを ―――
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