機 動 戦 艦 ナ デ シ コ
記 憶 の 欠 片


第1話
「告白」


火星と地球の中間地点
ナデシコの第二船体が地球に向かって進んでいる。
ボソンジャンプのブラックボックス『演算ユニット』を宇宙の果てに飛ばして1ヶ月が経っている。


展望室

芝生に座り本を読む少女、こちらに気づき
「こんにちは、ルリです。」
ペコリとお辞儀をするルリ

(え?質問?何故、地球に着くのがそんなに遅いのかですか?そんなの当たり前です。
このナデシコの脱出艇である第二船体には、相転移エンジンはおろか、
グラビティブラストやディストーションフィールド発生装置もありません。
ましてや格納庫もありませんから、エステバリスもありません。
あるのはブリッジと居住区、あと動力部の核パルスエンジンだけです。
核パルスエンジンでは、相転移エンジンの様なスピードは出ませんから遅いのは、仕方がありません。)

(え?救助を呼べばいい?・・・・ここは敵の勢力圏内です。
もし敵に通信を傍受されたら、攻撃も防御も出来ない第二船体では、あっと言う間に撃沈してしまいます。
だから今は通信もレーダーも停止して無音航行をしているのです。ちなみにあと2〜3週間はこのままです。)


「ルリちゃん、如何したの?」

自分の名を呼ばれて下を見る。そこにはルリの膝を
膝枕にして横になるカイトの姿が
「何でもないです。カイトさん」
優しくカイトの髪を撫でるルリ
そして、気持ち良さそうに目を閉じるカイト

(え?如何して、カイトさんが私の膝枕で寝ているのかって?
それは、・・・・私とカイトさんが恋人同士だからです。)

(え?何時から付き合っているのかって?
それは、一週間ほど前のお話・・・・)




一週間前
ブリッジ



チラ



チラ



チラ


「ルリルリ、なにをさっきから時間を気にしているの?」
操舵席に座るミナトが声を掛ける。

「な、何でもないです。」
自分の行動を指定されて頬を赤くするルリ

「ルリちゃん、怪しいよ。」
通信席に座るメグミが声を掛ける。

「分かった。」

「「「え?」」」
突然声がして振り返る3人
其処には、艦長席に座るユリカが居た。
(((艦長、寝てたんじゃ・・・)))

「それで、何が分かったの?艦長」

「ルリちゃん、お腹が空いたんだよね。」

「え?ち、違います!」
的外れな事を言われて戸惑うルリ

「隠さなくていいよ。もうお昼だし、ユリカもお腹がペコペコだよ。早く食堂に行ってアキトのご飯を食べたいよ。
ユリカが食堂に行ったらアキトが待っていて、『ユリカ、お前の為に特別料理を作った。食べてくれ』『アキト、嬉しい・・・・・』」
暴走モードに突入のユリカ

「また始まった」
「またですね。」
「バカ」

「ルリルリ、先に休憩していいよ。」

「でも・・・」

「ルリちゃん、遠慮しないでいいよ。」

ミナトとメグミを交互に見るルリそして
「そうですか・・・それでは遠慮なく・・・」
席を立つルリ、ブリッジを出る前にチラッとユリカを見る。

「『アキト、ア〜ンして・・・・』」
まだ暴走中だった。




居住区のとある船室の前

トントン、トントン

トントン、トントン
扉をノックするルリ、しかし返事がない。
(・・・留守のようですね。)
「オモイカネ、カイトさんが何処にいるか教えて」

『カイトなら、展望室に居るよ。』

「ありがとう」
ウインドウに向かって微笑むルリ、そして展望室に向かって歩き出す。




展望室

プシュー
扉が開き室内に入るルリ、室内を見回し、目的の人物を見つける。
芝生の上で大の字になっている。
(お昼寝でしょうか?)
起こさない様にゆっくり近づく




「こんにちは、ルリちゃん」

「え!」
突然声を掛けられ驚くルリ
「ごめんなさい。カイトさん、起こしてしまいましたか?」

「別にいいよ。それで・・・・ルリちゃん、何か用があるの?」
起き上がるカイト、自分の隣の芝生をポンポンと叩く。

「え?・・・・はい」
少し頬を赤らめながらカイトの隣に座るルリ

「それで何の用かな?・・・・もしかして、昨日の返事かな?」
ルリをチラッと見るカイト

顔を真っ赤にするルリ
「は、はい・・・よく考えて決めました。・・・それで返事をする前に、カイトさんにお聞きしたい事があるんですけど」

「いいよ、ただ記憶が無いから答えられる範囲でなら」

「それなら、大丈夫です。カイトさんの精神面的なことですから」

「え?なんだか難しそうだね。」

「それでは、質問します。」
段々ルリの顔が赤くなっていく。
「カイトさんは・・・・その・・・・少女・・・・ロリコンですか?」

「・・・・・・・え?・・・ええ!!」

「答えて下さい。カイトさんは・・・ロ、ロリコンですか?」
顔を真っ赤にして質問するルリ

「えっと・・・その・・・・たぶん、違うと思う」

「でもカイトさん、昨日言いましたよね。私の事が・・・・『好きだ、付き合って欲しい。』って・・・私まだ12歳の少女ですよ。」

「それは、分かっている。」

「なら、一体、私の何処が好きなんですか?何に惹かれたんですか?」

「・・・・・銀色の髪」

「え?」

「銀色の髪に黄金の瞳、そして白い肌、ルリちゃんの全部が好きだよ。」

「カイトさん、もしかして私のこと、からかっていますか?」
少しムッとし顔になるルリ

「からかっていないよ。僕はねルリちゃん、君を、ホシノルリという存在全てを、心の底から愛おしいと思っているんだ
だから、何処が好きかと聞かれても『全部』としか答えられない。」

「ど、如何して・・・・・如何してですか?まだ出会ってから1ヵ月も経っていませんよ?」

「・・・・はじめて、君に会った時、なぜだか分からないけど、凄く懐かしいと思った。」

「・・・・・」
黙ってカイトの話を聞くルリ

「懐かしくて、そして胸が張り裂けそうなくらい、君の事を愛おしいと感じた。
・・・・もしあの時、他の人が居なかったら、君を抱き締めていたと思う。
この1ヶ月の間、ルリちゃん事を考えない日は1日だってなかった。」

「・・・・」
カイトの話を聞いていたルリ、今では顔が真っ赤になる。

「今だって、君を抱き締めたいと思っている。」

「え?」
カイトを見るルリ、カイトと目が合い顔を俯く。

「これが僕のルリちゃんに対する気持ちだよ。」
自分の気持ちをルリに伝えたカイト、後はルリの答えを待つ。


















人工の風が吹き、微かに揺れる草の音がやけに大きく聞こえる。














「・・・・駄目か・・・・御免ね。ルリちゃん」

「え?」

「ルリちゃんの気持ちも考えないで、こんな話をして・・・凄く迷惑だよね。
謝って済まされる事じゃないけど、・・・・・御免、全部忘れてほしい。」
悲痛な顔のカイト、ルリの前から立ち去ろうとして立ち上がる。しかし

「え?」
立ち上がろうとした時、突然、止められた。振り返って見るとルリがカイトの袖を掴んでいた。

「カイトさん、私まだ何も言っていません、勝手に話を進めないで下さい。」

「御免」
もう一度、ルリの隣に座るカイト、チラッとルリを見る。

「・・・・私もなんです。・・・私も初めてカイトさんに会ったとき、懐かしく感じたんです。
・・・・それで気になって、会った日からずっとカイトさんを見てました。」
俯きながら話し出すルリ

「・・・え!?」
驚きで目を丸くするカイト

「カイトさんが、パイロットの皆さんとお話をして笑っている姿、食堂で美味しそうにご飯を食べている姿、
イネスさんの実験台にされそうになって逃げる姿、いろんなカイトさんを見ました。」

「・・・もっとカッコイイところを見て欲しかったな」
照れくさそうに頬をかくカイト

「カイトさんを見ているだけで私も楽しい気分になったんです。・・・・次第に私の中で貴方の存在が大きくなっていきました。
・・・・カイトさん知っていましたか?貴方が傍に居るだけで、聞こえてしまうんじゃないかと思うぐらい、胸がドキドキするんです。」

「ルリちゃん」

「そして昨日、貴方に『好きだ、付き合って欲しい。』と告白されて・・・嬉しかった。凄く嬉しかったんです。」

「ルリちゃん!!」
もう我慢できずルリを抱き締めるカイト

「あっ!?」
突然、抱き締められて驚くルリ、すぐに落ち着いてカイトの背中に腕を廻す。

「それじゃ、いいんだよね?」

「・・・もう分かっているはずです。」

「言葉で聞きたいんだ」
ルリの頬を撫で、顔を自分に向けさせ見詰め合う二人
「僕はルリちゃんの事が大好きだ、付き合って欲しい。」
もう一度告白するカイト

「はい、私もカイトさんが大好きです。」
頬を赤らめながら、嬉しそうに微笑むルリ



こうして、私とカイトさんは恋人同士になりました。
ちなみに、この事はナデシコの皆さんには秘密です。
私もカイトさんも、からかわれるのはイヤですから
見付からないように、扉にも通信にもロックを掛けて
短い時間ですがこうして、逢っています。






所変わって、ブリッジ

プシュー
扉が開き室内に入るユリカ

「・・・・・・あれ?ルリちゃん居ないんですか?」
ブリッジを見回すユリカ

「ルリルリ、なら休憩中よ。」
振り返りユリカに答えるミナト

「そうですか・・・・・行き違いになっちゃったかな?」

「何か用でもあるんですか?」
ユリカに尋ねるメグミ

「ええ、実はウリバタケさん達がエンジンの効率アップに成功しまして、地球到着の時間が早くなったんです。
それで何時間ぐらい早くなったかルリちゃんに計算してもらおうかと思ったんですけど・・・」

「それじゃ、ルリちゃん呼びますか?」

「・・・・・・ええ、お願いします。」

コンソールを操作するメグミ、しかし
「・・・・あれ?・・・・・おかしいな?」

「如何したんですか?メグミさん」

「それが、ルリちゃんのコミニュケ、ロックされていて通信が出来ないんです。」

「ルリちゃん何処に居るんですか?」

「え〜と、展望室です。あ!もう一人居ます。これは・・・・カイトくんです。」

「カイトくん?それじゃカイトくんに繋いでください。」

「・・・・・駄目です。カイトくんもロックされてます。」

「も〜〜〜二人で何やってるの、プンプン」
頬を膨らませるユリカ

「カイトくんとルリちゃん・・・・・あ!まさか、ミナトさん」
ミナトを見るメグミ

「ええ、ルリルリったらカイトくんに甘えているのかな?」
察しのついた二人、しかし一人だけ分かっていない。

「仕方がありません、オモイカネ、艦長権限で二人のロックを解除して下さい。」
オモイカネも艦長命令には、逆らえず渋々『OK』のウインドウを出す。
「メグミさん、ルリちゃんに繋いでください。」

「いいのかな?」
そう言いながらコンソールを操作するメグミ
そして、ユリカの前にウインドウが現れる。

「ルリちゃん、ちょっとお話が・・・・・!?」






ユリカがブリッジに入ってくる少し前
展望室

グ〜〜

「カイトさん?」
カイトを見下ろすルリ

「ハハハ、お腹すいたね。食堂に行こうか」

時計を見るルリ、休憩終了まであと1時間
「そうですね。まだ時間もありますし・・・・」

ルリの返事を聞いて起き上がるカイト、しかし途中で止めて、もう一度ルリの膝に頭を乗せる。

「?・・・あの〜カイトさん?」
カイトの行動を不思議がるルリ

「食堂に行く前にちょっと・・・」
そう言うと、片手を伸ばしルリの頬を撫でる。

「カイトさん」
撫でられて、頬を赤くするルリ

ルリの頬を撫でた手を、ルリの首の後ろに廻し、自分の方に引き寄せる。

「あ、あのカイトさん」
カイトが何を使用としているか、気づいて赤くなる
二人の顔が次第に近づいていき目を閉じるルリ
(あ、ファーストキス(///))

そして、二人の唇が触れそうになった。その時

『ルリちゃん、ちょっとお話が・・・・・!?』

パッと目を開き、声のした方を見る二人

『・・・・』
そこには、口を開けて固まっているユリカが映ったウインドウ

「「・・・・・何か用ですか?艦長(ユリカさん)」」

『・・・・・』

「「・・・・・」」

『・・・・る・・・る』

「「る?」」




『ルリちゃんがカイトくんを犯ってる!!!』

「なっ!!(///)」

「か、艦内放送!?」





『『『『『『『『『『『『『なに〜〜〜!!!???』』』』』』』』』』』』』


一瞬にして無数のウインドウに囲まれたカイトとルリ

『カイト、お前何やっているんだ!!』
『ルリがカイトを犯っているって!?』
『カイト!!俺のルリルリから離れろ!!』
『ルリルリったら、おませさん、何だから』
『カイトくん、どこまでいったの?』
『ルリちゃん、顔真っ赤だよ。』
『まったく、いけませんな、艦内の風紀が・・・』
色々と質問攻めにあう二人

「オモイカネ、通信遮断!!」
ルリの一言で一瞬で消えるウインドウ

「ルリちゃん」
ルリの頭を優しく撫でるカイト

「カイトさん」
カイトを見下ろすルリ、頬が真っ赤になっている
「これで、皆さんに知られてしまいましたね。」

「まあ、時間の問題だったから仕方ないよ。・・・・・それじゃ、行こうか」
起きて立ち上がり、ルリに手を差し出すカイト

「はい」
カイトの手を掴み、立ち上がる。そして、手を繋いで出口へと向う二人

「それにしても、面倒な事になったね。」

「そうですね。」

「「・・・・・ハァ〜〜〜」」
ため息をつきながら展望室を出て行く二人

その後、食堂にてカイトとルリの尋問が行なわれたとか



後書き


三千世界「今回も我が愚作を読んでいただき、ありがとう御座います。
これからも、色々な出来事を短編として作っていきたいと思っています。」

ルリ「やれやれ、こんな短編なんか作って本当に続くんですか?」

三千世界「それなら大丈夫、頭の中に4〜5話分の作品が出来上がっているので、後は書くだけです。」

ルリ「ならさっさと、書きなさい。」

三千世界「それが多趣味なもので、なかなか時間がなくて、あってもパソコンの前に座ると何故かゲームを起動させている自分が・・・」

ルリ「貴方は本当に書く気があるんですか?」
冷たい視線を送るルリ

三千世界「そ、それは・・・その・・・か、書きます。書かせて頂きます。だからそんな目で見ないで・・・(涙)」

ルリ「・・・ならいいですけど、今回の作品はカイトさんが私に愛の告白をしてくれる。お話ですね。
しかもお互いに初めて会うのに懐かしく想い、私とカイトさんはラブラブ・・・・・・これはつまり、
私とカイトさんが前世でも恋人同士だったという証拠ですね。」



三千世界「・・・・・・はい?」




ルリ「これはもう間違いありません。私とカイトさんは現在、過去、未来・・・いいえ!!全ての並列世界においても結ばれる運命なのです!!」

三千世界「・・・・・運命って・・・・本編では敵なんですけど(汗)」

ルリ「ああ、カイトさ〜ん♪」
自分で自分を抱き締めるルリ

三千世界「・・・・・聞いてないよ。(汗)・・・・あっそろそろ時間ですね。それでは皆さん、さようなら・・・・・・・チラ」

ルリ「『僕はルリちゃんの事が大好きだよ』『私もカイトさんの事が・・・・・』」

三千世界「・・・・・・ダメだこりゃ(汗)」


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