His family is・・・

某月某日(ナデシコにあたる隕石が多い日)



 「お前一体何にやらかしたんだ?」

顔に好奇心とおせっかいを浮かべながら話しかける青年がいる。

「もしかしてものすごく楽しんでない、この状況」

返事をするのは青年より頭半分ほど小さな青年、否少年が答える。

「そりゃ、そうだろ。人前であんな怒り方艦長がするのは見たことないぜ。あっ、お前と2人っきりだと違うのかな」

「見ていたのか!」

「そりゃー俺とハーリーとオペレーターのキヨミちゃんと食堂のスズちゃんと広報のレイナちゃんと医務室のエレーナさんと」

カクンと膝を落とす少年

「女の人ばっかじゃないですか」

少年の批判を待っていましたといわんばかりの顔でにやけている青年。

「そりゃーな、ハーリー”世の中の女は艦長だけではない”って教えなければならなかったしな」

「何でハーリーにそんな事教えるんだよ」

少年は顔に疑問と困惑の色を出しながら立ち上がった。

「おいおいそりゃないだろ」

青年はゴホン咳払いをして椅子に座り直した。

「それでは教えて進ぜよう。とあるナデシコ艦艦長R.H氏が某大企業から出向してきたK.T氏とオフィスラブってるんだってことさ」

「著、ちょっと待てよ。俺は別にルリちゃんとは清い交際をだな・・」

「あれー俺がいつ君たちって言ったけかな?」

「あっ、あからさまに」

少年詰め寄ろうとした瞬間ツルッと足を滑らせた。

「キャッ!何をするんですか!」

ちょうど少年の前に座っていた女性士官はかわいいらしい声を出しながら少年のほほに平手を放った。

「イテテッ」

少年はほほを押さえながらうなった。

「ブリィーフィング中にセクハラですか。いいご身分ですね中尉」

部屋の前方から少女が声を放つ。その瞬間部屋の温度が3度下がった。

「あのルリちゃ、いやいや艦長これは誤解であります」

少年はテンパっているのかなぜか旧時代の軍隊口調になる。

「言い訳はいいです。懲罰は・・・そうですねブッリジの掃除を。もちろん自動機械は使用しないでください」

「って、俺の肉体のみっすか!」

なぜかいやらしい表現を使う少年。

「そうです。隅々がんばってきれいにして下さいね。カイト軍曹見習いさん」

(軍曹見習いか・・落ちるとこまで落ちたんだなー)と心底哀れむがフォローはしないナデシコBクルー。

もちろん・・・とばっちりが怖いのである。





ナデシコB艦内食堂


「くっくっくく・・。笑った笑った。」

先ほど青年が腹を抱えて転げまわってる。

「サブロウタさん恥ずかしいですよ」

女の子と見間違えるようにかわいい少年が青年を嗜める。

さてここで2人の紹介をしよう。

ここで笑い転げている青年はタカスギ・サブロウタという。本職はエステバリスのパイロットである。

ちゃらちゃらしているようで本当にちゃらちゃらしているがクルーの信頼は厚い。

ここにいる少年はマキビ・ハリ。本職はオペレーターである。

母性本能をくすぐる容姿なので艦内の女性には弟のようにかわいがられている遊ばれている。

「まったくカイトさんはなにをやったんですかね サブロウタさん」

あきれた口調でしゃべるが顔は満面の笑みを浮かべている。

「ハーリー残念だが艦長とカイトはうまくいっている」

「どういうことですかサブロウタさん!艦長さっきものすごく怒ってたじゃないですか!」

チッチと指を振るサブロウタ。

「艦長さっき隠れるようにブッリジに行ったぞ」

ドッギャーンと全身で効果音表現しているハーリー。

(実はカイトに手を貸したというか借りたというか・・・許せよハーリー)

実はジョーカーはサブロウタであった。





ナデシコBブッリジ


「ふぅぅ、まだ半分か」

疲労の色が濃く手はふやけている。どれだけ雑巾がけをしたのか。

「どうぞお好きなウルトラアクエリアスです」

「どーも」

ぷっしゅとプルタブをあけるカイト。

ゴクゴクと液体がのどを通る音が二人っきりのブッリジに響く。

・・・・・・・・・

「って、ルリちゃん!」

「気づくのが遅いです」

「えーとルリちゃんでいいよね」

「まぁ、いまは2人ですからご自由に」

「うぅーー、ルリちゃんまだ怒ってるの」

軽く目じりに涙をためて話すカイト。

「怒るも何も・・・あんなことをすれば誰だって怒ると思いますよ」

カイト氏が何をしでかしたかというと事の顛末はこうだ。

ナデシコBは2ヶ月の航海を終え岐路に帰る途中に月に寄った。

クルーが半舷休息中にカイトはエステを無断で使用。

しかもその形跡をオモイカネを使って消したのである。

さらにその手際は完璧で月基地の人間は誰一人として気づかなかった

カイトのやったことは誰にも知られないはずだったが単純なミスをした。

1:使用したコンピューターは意思があり

2:完全にルリのことを慕っていることを忘れていた。

そんなこんなでカイトのしでかしたいたずらはホシノ・ルリ艦長唯一人が知ることとなったのである。

カイトは残ったスーパーアクエリアスをごくごくと喉を鳴らし飲み干した。

「カイトさんその飲み物まだ好きなんですか?」

少しあきれた顔で問いかけるルリ。

「いや、まーなんつーか一時期飲みすぎたからね。」

なぜカイトがそんなにこの飲み物に取り付かれたかというとそれは懸賞である。

もちろん商品はたいしたものではなかったのだが一度集めると止まらない。

あと少しだとかこれだけあるからとか飲んでいると懸賞応募期間が終わった後でもいつの間にか手を伸ばしてしまう。

恐るべし懸賞!

「大体それ栄養素が異様にたかいじゃないですか。点滴並みで一日一本飲んだら1ッ月で10キロ太るって話じゃないですか」

「確かにその話は本当だね。でも僕って消費カロリー人の3倍だからいいんだい。」

子供がお菓子をたくさん食べる時に言うような言い訳をするカイト。

「まったく・・・。いつまでも子供ですね。将来旦那さんが太っていたらいやじゃないですか・・・

顔を真っ赤にして呟くルリ。

聞こえていやしないかと(少し、いや半分くらいは期待して)カイトのほうに顔を向ける。

もそもそとノーカロリーメイトを食べる。

注:ノーカロリーメイトとはカロリーメイトのチョコ味がおいしすぎて貪り食う一部の若者向けに味だけそのまま

カロリーを1000の一以下に抑えた一品。無論通はカロリーメイトを意地でも食す・

「うん?食べたいの?仕方ない半分あげようマドモアゼル。」

なぜか貴族なカイト。

「はぁー。馬鹿・・・はやめたんですけどね。馬鹿」

一時期慣れ親しみそして封印したはずの十八番の決め(?)台詞を出す。

「馬鹿はひどいよー。」

とすっとぼけた顔でカイトは抗議をする。

どちらからともなく笑いが漏れる。

それは大きな笑いではないが暖かさと信頼を含んだ暖かい笑いだった。

しかし急に真剣な面持ちになるカイト。

「ルリちゃん。真剣な話があるんだ」

一瞬カイトの真剣な顔にドキッとするが直ぐにいつものカイトを思い出し呆れ顔で

「なんですか?」

そっけなく答えてしまう。

「僕と・・・旅行に行こうじゃないか!」

「・・・はい?」

あまりにシンプルで予想できない発言に問い返すルリ。

「だから、一緒に旅行行かないって聞いてるのさ。いやなにたまたまサブロウタさんがチケットとっていけないから

たまたまそばにいた僕に声がかかったんだ」

カイトはおでこに汗をかきながら早口で答える。明きらかに何か裏がありそうな雰囲気をかもしだす。

しかし一方のルリはというと



(ちょっと落ち着いてください。確かに私たちは付き合っているというかプチ付き合っているというか・・・

けど二人で旅行なんて早すぎる そんな事ないわねいまどきの子だったらこんなこと当たり前よね

それにカイトさんが旅行に誘ってくれるなんて一生涯ないわね

けどもし大人の・・・)



「あのールリさん聞いてますかー」

「もちろんです。旅行の日程は艦がサセボドックに入ってオーバーホールに入っている間の一週間の休みですね」

「なぜそこまで!言ってないのに・・・」

言ってもいないことを先読みされ心底びびるカイト。

「簡単な推理ですよ、カイトさん。近いまとまった休みが取れるなんてそれ位じゃないですか。

付け足して言うならサブロウタさんはその一週間はナデシコの責任者代理です。」

「・・・なるほど。そこまでやるとはさすがはルリちゃん。」

「見直しましたか?」

「うん。すごいもんだ」

心底感心した顔のカイトが呟く。

「ところで場所はどちらに行くんですか?」

「それは・・・箱根の山奥の秘湯さ」

「温泉ですか。分かりましたご一緒させてもらっていいですか?」

「もちろんさ。だから誘ったんだよ!」

顔中に世界中の必死さと一生懸命さをこめていう。

その気持ちを読み取ったのか満足げに微笑むルリ。

「それでは詳しくは地球についてからということで・・・」

「うん,うん分かったよ。旅行か。いいね響きが」

「それではお掃除のほうはがんばってくださいね」

「えっ!罰は進行中ですか!」

ルリはその質問には何も答えずにブリッジを出て行く。

厳しいとかは厳しく艦内の決まりと私事を区別するその姿はやはり名艦長であった。

「今日は夜中まで雑巾がけか」

その世ブリッジにはただ水ぶきをするを音が響いていたという。

(オモイカネのオート航行プログラムのためにカイト一人がブリッジにいれば良かった為)