リレー小説 『夏祭り!』 

<第5話>

後編

穏やかな昼食会も終わり、いよいよメインイベントとなるテーマパークのオープニングセレモ二ーのために会場入りした一同。王家の皆さんはもとよりこんどはルリとラピス、ゲストのアサミやメグミ、ホウメイガールズは言うに及ばずユリカ達、表舞台に出るスタッフも皆、和服姿だった。レイラいわく

「せっかく皆さん和服姿で来て下さったんだから、皆さんも統一しなくちゃあ。」

だとか。ちなみにカイトは警備責任者の為、背広姿だったが。流石に紋付袴で、警護は出来ない。カイトはゴートと、警備スタッフの各セクションのチーフとミーティング中。時間が迫っているため緊張した空気が流れる。そんななかで、オープニングセレモニーの準備を仕切るのは整備班々長ウリバタケ・セイヤ。彼の指揮の元、整備班を含めたスタッフ一同が駆けずり回る。

「おまえらー!!気合入れていけ―!!ルリルリの桧舞台だからなー!!」

「「「「「「「「「おお―――――――っ!!!!!」」」」」」」」」

余談だが、スタッフの中には、電子の妖精ホシノルリファンクラブの面々も大多数混じっている。

今回、地元警察は元より、宇宙軍は言うに及ばず、統合軍からも警備要員が多数派遣されており、しかも全員、ファンクラブの面々で、このために志願した者達ばかりであった。まあ、総括軍が仕切るのは宇宙軍と統合軍の衝突を避け、双方の指揮をとるのが本来の目的なのだが、実際は、彼らファンクラブの面々が暴走して、軍のイメージダウンを避ける為なのかもしれない。一介の中尉であるカイトだが、事、現場指揮において、群を抜く指揮能力を持っていることは軍のなかで知らない物がいないほどであり、そして、なにより、ルリの大切な家族だという事も知れ渡っている。彼を事実上の現場監督といえる警備総責任者に指名したのも実はそんな理由だったりする。

だが、なによりルリの為ならと、警備のみならず、イベントの応援も手伝ってくれているので突貫工事ながらも予想以上のハイペースで事が進んでいたりする。そして、テーマパーク開園の時間となった。

テーマパークの中で、最大の収容人数を誇るテーマスタジアム。そのステージでテープカットが行われる。本来は入り口でやるはずだが、来客数が半端でなく、混雑する為、先に入場させ、このスタジアムからの映像を各テーマパークや広場にウインドウを展開して行う事になった。もちろんスタジアムの客席も、満員御礼。そして、開園となる午後一時の時報と共にテープカット。その面々はルリ、来賓のピースランド国王、ジョン、レイラ、そして、ゲストのメグミ、J−MESH・レヴォリューション、アサミ、そして、スポンサーのアカツキ、そして、クリムゾングループから、リチャード・クリムゾン社長と娘のアクア(アキトに薬を盛った妄想爆裂娘)、そして、世界の名だたる一流企業のオーナー達。といったそうそうたる方々。

アクアの姿を見て、アキトが顔色悪くなったのとユリカとメグミが引きつった笑顔だったのは余談だったが。

その直後、テーマパーク全体が歓声に包まれた。一日支配人がセレモニーの司会を進行する。ルリがマイクに立つと今度は静寂に包まれる。

「テーマパーク、ピースシティ・ジャパンへ、ようこそお越しくださいました。それでは、当テーマパークのオーナーであります、ピースランドのプレミア国王陛下より、開園の挨拶をお願いします。」

ルリの紹介で、マイクに立つ国王。威厳のある表情であったが、突如、天晴とかかれた扇子を広げ、笑顔で一言

「堅苦しい事は抜きに、皆さん楽しんで下さい。時間がもったいない。セレモニーはこれで終了。さ、ルリ、パーッと楽しもう。ゲストの皆さんも肩を張らずに、せっかく来たんだから。」

と、速攻でセレモニーを終わらせてしまった。アカツキ以外のスポンサーの方々は唖然とするがそれも束の間、みな、家族や部下達を連れて、銘々好みのアトラクションに向かった。

「・・・・・・いいのか?あれで。」

一番唖然としたカイトが言うが、レイラは、

「先にオープンしているテーマパークのオープニングでもいつもああよ。あの国王は。皆に楽しんでもらうのに待たせちゃあ悪いってさ。さて、これからが本番。ルリちゃんと国王一家にそれぞれのアトラクションを体験してもらってそれを随時ウインドウっで中継するから。」

とレイラがいいだしたその時・・・・。突如ウインドウが開いた。

「我々は、このテーマパークに時限式の爆弾を仕掛けた。このテーマパークを一瞬で吹き飛ばせる威力の物を。」

「これって、お前らの演出?」

「こんな悪趣味な演出するわけないでしょ。」

カイトの質問に憮然として答えるレイラ。ウインドウには、一人の人物がシルエット状に淡々と話し掛ける。

「解除して欲しければ、これから述べる我々の要求をのんで貰おう。その要求は、地球連合の解体と同議会の解散。そして、軍施設の一切の権限の我々ヘの譲渡。そしてカイト財団の全ての財産と出資している債権の我々への無条件の譲渡。そして、我々の起こす新たなる秩序の構築の為にいかなる束縛もしないという超法規的措置の発動。」

「いきなりは無理ですねえ。なにせ事が事ですし、時間を頂かないと・・・。」

交渉のプロであるプロスペクターが応対する。

「流石にすぐに返事がくるのを期待していない。夜8時まで待とう。夜8時この場所にまた現れる。ただし、避難勧告を出した場合、即座に爆破スイッチを入れるのでそのつもりで。それと、爆弾は一つじゃない。それに、下手に動かすと爆発するから、下手な事はしないように。」

「それと・・・このことは、ここにいる人間だけのメッセージかしら?」

レイラが挑発的に問い掛ける。

「流石にパニックになって、押さなくて済むはずの爆弾のスイッチを押さざるをえなくなっては我々としても意味がない。我々としても、穏やかに事を済ませたいからな。」

「それはどうも。」

カイトが冷淡に答える。

「いい返事を期待してる・・・・・」

そういって消えるウインドウ。重い雰囲気が立ち込めるが・・・・

「な〜に暗い顔してんの、こんなのただの脅し。そのためのネルガルシークレットサービス。そしてスペシャル・フォース・サービス。でしょ。大丈夫。貴方方が暗いとこのテーマパーク全体が暗くなっちゃうでしょ。パーッと行くわよォ」

レイラがその場を盛り上げる。そして、ジョンが

「奴らの目星はついてる。こっちの方は俺たちに任せな。」

そういってその場をはなれていった。

「済まない・・・・また私たちのせいで君たちに迷惑を・・・・・・」

鎮痛な面持ちで語る国王。そんな国王をルリは

「お父様のせいではありません。悪いのは彼らなんですから。それに、いまさらこんな脅しに屈するようではナデシコクルーは勤まりません。大丈夫です。それより私たちは私たちがやるべき事を行いましょう。私たちが不安がっていたら、観客の皆さん不審がって情報が漏れる危険性もありますから。」

とたしなめる。

「そうだな。そんじゃあ夜八時はここでスペシャルイベントだ。派手にいこうか。」

カイトが激を飛ばす。スタッフの士気を戻すのにはその一言で、十分だった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そんな彼らを影から見ている一人の女性。口元に笑みを浮かべていた。

 

ステージから表に出る一同。その玄関前に立つ甚べえ姿の7人の男。その中心、右目に包帯を巻く男 北辰。

軍の人間は身構えるが、それをカイトが制する。

「カイ・・・・」

アキトがカイトに詰め寄ろうとするが、カイトはアキトにアイコンタクトを送る。

「ようこそ。今日はゆっくり楽しんでいって下さい。」

「汝に渡す物がある。」

詰め寄ってくる北辰。カイトに一枚のディスクを渡す。

「今回の件、我々は関知してはおらん。そのディスクに詳細が入ってる。」

ディスクを受け取ったカイトは。

「有難うございます。しかし、上のものが黙ってはいないと思いますが。」

「上の人間も知らん。スポンサーが勝手にやった事だ。それにこれはお礼だ。これのな。」

そういって左手に隠し持っていた焼き鳥を出した。

「あいつに伝えとくよ。それではごゆっくり。」

「また会おう。」

そういってきびすを返し去っていった。アキトがカイトに問い掛ける。

「・・・いいのか。カイト。」

「心配ないさ。彼らはあくまで上の指令で動いてるに過ぎない。その指令がない以上自由時間さ。楽しむ権利はある。何よりラピスちゃん、おびえてなかったろ。怖い面構えなのに。それより・・・・」

「ええ、ちょっと貸して。」

ディスクをノートPCにつないで、データを出すレイラ。

「どうやら信用してよさそうね。こっちの処理は私の方で対処するから何人か人借りるわ。」

「解った。メカに強いのをつける。それと、イネスさん。」

「解ってるわ。レイラに付きあえってんでしょ。ちょっと着替えてくるから。」

「すいません。お願いします。」

そんなこんなでそれぞれ動き出した。

カイトたちは本来のスケジュールどうりアトラクションを楽しみながらルリ達の姿を中継していた。幸い、アトラクションは並ぶほどでなく、(客が少ないのでなく回転が速いため。)アウトドアのアトラクションはスムーズに行われ、インドアのメイン、ウォーターパークへと移動。ここでは全員水着となる。そして、着替え終わり更衣室から出てようとしたルリだったが、イツキに止められる。

「ちょっと待ってて。」

「何でですか?」

「いいからいいから。」

ホウメイガールズが先に出て、次にメグミそしてアサミがウォーターパークの広場に現れ黄色い声援が木霊する。

「お待たせしました。ここ、テーマパーク、ピースシティ・ジャパン一日支配人であり本日のスペシャルゲスト、地球連合宇宙軍少佐試験戦艦ナデシコBの天才美少女艦長ホシノ・ルリさんで〜す。

「ハイ、ルリちゃん、頑張って。」

そういってルリの背中を押すイツキ。

広場にやってきたルリは、詰め掛けたファンの大勢の黄色い声援を一身に浴び、真っ赤になっていた。が、すぐに

「・・・・・はじめまして。当テーマパーク一日支配人を勤めさせて頂いてますホシノ・ルリです。今日は皆さん、楽しんで下さい。」

と冷静になって挨拶した。実はTVの特番中継だったりする。正面のディスプレイでは司会しているTVのタレント(名前の知らない)が質問してくるのだが、

「恋人はいますか〜」

いきなりこれである。ルリの後ろにいたサユリが

「ここでカイトさんのこといっちゃいなよ。」

とささやく・・・・が

「ノーコメント」

しれっと言いのけた。他にも他愛のない会話が続き、司会者が、一言

「ホシノさんは歌が上手と聞いたのでここで歌ってくれませんかね〜」

(・・・嵌められた。)

ルリの笑顔は引きつっていた。そう思っていたら曲のイントロが流れてくる。以前一番星コンテストでルリが歌った事のある曲だったうえ、正面のディスプレイに歌詞が表示されたので、一曲フルで歌いきった。歌い終わった後大歓声が上がったのは言うまでもない。ナデシコの関係者も・・・・・。

「くう〜〜〜〜ッやっぱルリルリは最高だぜ〜〜〜〜」

「よかったです。艦長〜〜〜〜」

と、ウリバタケ、ハーリーハもちろん皆、拍手していた。一方カイトは

「ルリちゃん何気に怒ってたなあ・・・・・大丈夫だろうか」

「う〜〜〜〜んやっぱりルリちゃんいいっすね〜〜〜〜。むりにスケジュール組んでもらって正解でした。」

とその横で涙をながしながらイケダさんがつぶやいた。

「い・・イケダさん。もしかして、あなたが仕組んだの?テレビ中継のゲスト。」

「ええ。ミスマル総司令には了解を得た上でですけどね。軍のイメージアップにつながるから。」

「はあ・・・・・・・・・・」

カイトは深くため息をついた。歓声が落ち着いたのを見計らいルリが話し出す。

「有難うございます。そして、この場をかりて、みなさんに伝えたい事があります。ご存知かと思いますが、私は人工的に生み出された人間です。そして・・・・実験によって特殊な力・・・・コンピューターとお友達になる力を与えられました。そして、その力は、戦争に使われ、たくさんの人の運命すら狂わせてしまった。戦争を終結に結び付け一度は艦を降り、皆さんと同じ普通の生活もしました。しかし、ある時、知ってしまったんです。私と同じように生み出された人間が、白い目で見られていることを、非人道的な扱いを受けている事を・・・・・そして、考えました。彼らだって同じ人間です。ただ・・・親と呼べる人もなくモルモットとして生を与えられ、そして用済みとなったら使い捨て。貴方方だって同じ事をされたら哀しむはずです。彼らは被害者なんです。白い目を向け、そして、制裁を与えるべき相手は自分の理想や研究、野心の為の道具にするために人間を作る人たちです。そして、・・・人工的に生み出された人たちを誹謗、中傷するような人を、わたしは軽蔑します。そして、あまりにひどい仕打ちをする人は嫌でも償いをさせます。わたしが軍に戻ったのは、自分のような、そして、自分以上に辛い思いをしてる人をもう出したくないからです。だから・・・・アイドルにはなれません。」

ルリの真摯な話にしんと静まり返り、そして、盛大な拍手が送られた。その後もにぎやかに中継が続いた。

 

そして・・・午後7時30分すべてのアトラクションが終わりステージに戻る一同。レイラ達やジョンも戻っていた。

「どうだった。」

緊張と不安の入り混じった表情で、カイトが問い掛ける。

「・・・・・あのディスクの通りだったわ。爆弾は黙らせたから安心して。そして、ウインドウの電波を探知できない場合相手がボタンを押した時の電波を逆探知するから、その準備ができるまで時間を頂戴。」

その後ろではイネスとセイヤの指揮の元、搬入された機械のチェックがが行われていた。

「わかった。それと、ジョン。そっちの方は?」

「ああ、すでに証拠はつかんである。このイベントが終わったらそいつの所に行く。」

「了解。それじゃあパーティの最後、派手に行きますか。」

そして、午後8時、グランドフィナーレが始まる。観客席はチケットの番号の抽選でえらばれた客で満員。ルリが開幕を告げる。

「本日は、当テーマパークにおこし頂き、まことに有難うございます。みなさま、楽しんでいただけたでしょうか。」

「おお――――――――ッ」

大歓声が沸き起こる。そのとき、大画面で一つのウインドウが開く。」

「諸君、結論はでたかね。」

「なんの結論ですかな?」

カイトがとぼける。

「物覚えが悪いようだな。」

「すみませんがもう一度話してくれませんか?ゲストの皆様にもわかるように。」

「いいのかな。パニックになっても・・・・・」

「そのパニックも利用したいんです。これから始まるビックイベントの為に。」

「ふっ。いいだろう。せっかくだ。楽しませてもらおう。では、もう一度言う。このテーマパークに時限式の爆弾を仕掛けた。このテーマパークを一瞬で吹き飛ばせる威力の物を。」

相手はそう言いながら手のひらのリモコンをちらつかせる。そのセリフでざわめき出す会場内。

「そうでしたね。で、その爆破予定は?」

「午後八時半。もっともその気になれば今すぐにでも爆破できるが。」

「さいですか。じゃそれまで世間話でもしましょうか。いまさら避難させても無駄でしょうからねえ。」

「時間稼ぎは無駄だ。」

「まあそうおっしゃらず。連合議会のほうで、いまだに議論中な物で。返答がここにくるんですが。それまでお待ちください。議会の方にもこの様子モニターされてますから。それともあせって何もかも無駄にすると?」

「・・・・しかたない。」

「さっそくですが、何でこんな事を?」

「世の中をわたしの思うとうりに動かしたいの。」

「そりゃまた何故?」

「私を疎んじたものを排除するため。」

「はんっ。そんな理由か・・・・くだらない。」

「なんだと・・・」

「くだらない。といったの。そんな理由でまきこまれるなんて堪らない。連合議会からの返事は既にもらってる。答えはノーだ。いくらたくさんの人質をとられても、地球人全体の治安と安全を放棄するような馬鹿げた要求をのむ政府があってたまるか!!」

「ほう・・そうか・・・はったりかどうか試そうと。いいのか・・・それが命取りになるというのに。」

「そう。これであたし達も最後。この華やかなステージで散るのね。」

「「「「「「「「「え゛・・・・・・・」」」」」」」」」」

突然ステージの前に出てきたのはクリムゾン家の妄想娘アクア。しかもその手にはウインドウの相手が持っている物と同じリモコン。

「ま・・待て・・・・・・・・・・・・・・・」

ウインドウの人物が制するも・・・。

「アキト―――――これでやっと一緒に死ねるのねエー――――」

そういってリモコンのボタンを押すアクア。・・・・・・・この状況でなんだけど、あんた、アキトの事まだ諦めてなかったんか。

そして・・・

ひゅるるるる―――――パ―――――ン!!

「「え?・・・・・・・・・・・・・・」」

ウインドウの人物とアクアが間抜けな声を発する。それ見たことかといったような表情でレイラがマイクの前で

「残念でしたねえ。既に爆弾は解体済み。こちらの用意した打ち上げ花火のスイッチに連動させていたのよ。」

そういうと、スタジアムの屋根が開いていき、夜空には花火が次々上がっていく。

「ま・・・まさか・・あの時間で解体など・・・・・」

「そう言う事。我々を出し抜こうなんて10億光年早いよ。それよりあんたには聞きたい事がある。あとでそっちいくから。」

ジョンがウインドウを指差しながら言う。

「く・・・・覚えてらっしゃい」

「あんたがな。」

そう捨て台詞をはきながら消えるウインドウ。そして、アクアに近づいていくジョン

「何で貴方がこんな物もってるんですか?」

「な・・・なんでって・・その・・・・」

「そ・・・それは・・・・・」

父親のリチャードが取り繕うとするが、

「あんたの娘達のやったおいたについて、それ相応の措置をあとでしますので。今日の所はお引取りを。本社までお送りします。」

ジョンの部下に連れられて退場させられるクリムゾン親子。

「そんじゃ、リハーサルはこの位にして本番いきますか。」

スタジアムの客席にいた軍の人間や、スタッフが一般客を客席に誘導する。

 

そして、本当のフィナーレがつつがなく行われた。

 

クリムゾン本社ビル

その重役専用室の一室

「うううううううう・・・・・・・・・・・・・」

こみ上げる怒りに震える一人の女性。

「なぜ!!なぜ失敗した!!」

その部屋を勢い良く開けはなった二人の男。

「き・・・・貴様ら・・・・なぜここに。」

脇にいた男が銃を抜こうとするが

ドゴー――――ン

カイトのほうが早く、相手の懐の銃に命中。そしてカイトが、

「ま、硬いことは抜きに。」

「おぼえてらっしゃいって言うからわざわざ来てやったんだがねえ。黒幕さん。」

ジョンが相変わらずの口調で答える。

「いや、クリムゾングループのシャロン・ウイ―ドリン・クリムゾン取締役といったほうがいいですかな?」

カイトが、銃をシャロンに突きつけながらいう。

「黒幕って、何の事かしら。」

「おやおや、まだとぼけますか。これでも」

ジョンがシャロンの足元にいくつかの書類を投げ捨てる。その書類は、テーマパークの設計図の一部と設置された場所。仕掛けられた爆弾と、分解した物の写真。そして、爆破するシステム。それらすべてクリムゾンが施工した所だった。もちろんそれだけ証拠がそろってる以上言い逃れができない。

「あんたは最初からテーマパークを爆破するつもりだった。あんたと反目してる父リチャードと腹違いの妹アクア、そして、ジョンや、カイト財団総帥のレイラ、それにピースランド国王陛下やライバル企業のトップを纏めて消す絶好のチャンスだったんだからな。それも、アクアが起爆装置をもう一つ持っていたのも実は計算済み。自殺願望が強いからな。最初から脅迫が目的ではなかった。だがそれが命取り。俺たちに感づかれる事になったんだからな。」

カイトは最初にステージてウインドウと対峙した直後、アクアが物陰で微笑んでいた事にきづいていた。

「爆破されれば証拠も吹っ飛ぶ。そう思ったのがあんたの命取りさ。もっとも、システムを黙らす事なんて、レイラとオモイカネがいれば簡単な事。」

そうジョンが付け加える。

「フッ・・・こんなものが証拠になると思って?こんなもの・・・裁判でどうにでも」

「おれたちにはそんな事どうでもいい事だ。」

拾い上げた書類を見て、振るえながら強がりを言うシャロンを掴み上げ、後ろの机上に押し付け、覆い被さるカイト。

「許せないのは大事な人たちに手をかけようとした事だ。裁判なんて生ぬるい。今ここで引導渡そうか?」

普段は見せない殺気だった形相で睨みながら迫るカイト。

「どうするつもり・・・・・・」

「別に、どうもしないさ。どうせあんたは今の地位を追われる事になる。すでに連合議会は、クリムゾンに経済制裁を与える決議を非公式に採択している。下手に訴えるよりそのほうが合理的だからな。企業として、存続する事ができるのならとあんたのじいさんのロバート会長も、その制裁を受けるといってるからな。それに、これは警告だ。もし、また大事な人たちに手をかけようとするなら・・・・・・今度こそ、容赦はしない。」

そういいながらハンマーの引いた銃口を眉間から徐々に下に下げ、そして下腹部で止めたとたん・・・

「バンッ」

カイトが口で脅かすと、シャロンは・・・・・・

「ひいッ・・・・・・」

・・・失禁していた。

「おいおい・・・・あんまイジメんなって・・・」

「このぐらい言わないとだめだって。また反撃してくるかもしれないだろ。じゃ、そういう事で。」

そう言いながらドアから出て行くカイトとジョン。放心状態のシャロンは・・・・

「た・・・・・助かっ・・・た・・・・?」

そう呟くしかなかった。その数秒後、駆けつけた警備員に醜態をさらされるのだが・・・・・・

 

そして・・・ステージの脇、誰もいない所にボソンジャンプしてきた二人。

「おわったな・・・・」

「本ッとお前が絡むとろくな事が無い。」

「まあそういうなって。そのお陰で助かったわけなんだし。それじゃあ行こうか。っておいっどうした。」

カイトは・・・・・その場にぶっ倒れた。

 

混沌とした闇の中・・・・・・

「はじめまして・・・・というべきかな?」

「あなたは・・・・・」

「あんたは・・・・・」

「君らとおんなじ、もう一つの人格。と言ったとこかな。」

「「どういう事だ。」」

「元々作られた存在だったこのミカヅチの体。その体を作り変えられた際、人格を書き換えられた・・・はずだった。」

「「書き換えたのは・・・古代火星人!!」」

「ま、そう言ってるんだっけな。だが、そこで、アクシデントが起こった。ナデシコに送られた際、ボソン変換時にトラブルが発生して、双方の人格が衝突。相殺され、記憶喪失になった。そして、カイトという新たな人格が形成され、今のこの体の主人格になってるのさ。」

「それで・・・あんたはまた俺を封じ込めようと?」

ミカヅチが問う。

「別に。そんなつもりはないさ。私は彼らに与えられた任務を遂行するだけ。カイトの意思のもとにな。」

「僕の?」

「そうさ。今の主人格は君の物。それに、相殺されてた訳だから、今までこの人格が表に出ることもその必要もなかった。それが先日の暴走で、ミカヅチがでてきたんで俺も出てこれたって訳さ。まあ、あの暴走は毒の影響と人格の不確定な状態によるものだから二度とああはならないだろう。」

「せっかくの出番、取られちまったな。」

ミカズチが憮然と、それでいて楽しそうに言った。

「お前が出てたらシャロンもただで済まなかったろうからな。それに、今回はわざとだろ?出なかったのは」

笑いながら彼はいった。

「「「フッ・・・ははっははは。」」」

笑いあう三人。

「それじゃ、俺はこれで。」

「「そういえば、名前は?」」

「・・・あえて言えば・・・竜崎テツヤ・・・かな?」

「キザな野郎だ。だが、悪い奴じゃあない。いい奴でもなさそうだがな。俺も行くぜ。じゃあな、カイト。」

「失礼するよ。」

「じゃあな。」

「さよなら」

 

 

 

そして、僕は目を覚ます。

「・・・・ここは・・・・・・」

「ホテルの一室です。いきなり倒れたんで、ここに運んだんです。」

ルリが額のタオルを直しながらいう。起き上がろうとするカイトだったが・・・

「そうか・・・・・・あ・・あれっ?力が・・・・」

「駄目です。安静にしてください。疲れが溜まってるんですから。全て終わって緊張の糸が切れたんでしょう。イベントはもう全て終わって、また明日から祭りの続きがあるんです。」

「・・・そうだね。」

「ゆっくり休んで下さい。」

「うん。おやすみ。」

そして僕は眠りについた。翌朝、ルリちゃんが同じベッド(しかもダブルベッド)で寝ていたのは(しかも僕の着替えのワイシャツ一枚で。)秘密の話。

「満室で、部屋はもとより他にベッドが空いてなかったんで。」

 

 

 

                                                    第5話終わり。

 

Post Scriputo

Morry:「やっと終わりました。いろいろと皆様にご迷惑をかけて申し訳ありませんでした。すべてわたしの責任です。その責任を全うするた     め、書き終えました。

     大変お待たせしました。F&Gさま。第六話お願いします。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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