リレー小説 『夏祭り!』 









<第1話>


ネルガル本社の会長室で皆が集まったあの日から数日・・・それでもネルガル主催の夏祭りは連日連夜に渡って繰り広げられていた。

まるで町一つがでっかい会場になったのではないのかと思わせる広さだ。そして近隣の人々だけでなくこの様子をニュースで見た人達も続々と集まり祭りは大盛況、かつてナデシコ長屋と呼ばれた其処は人でごった返していた。

そしてそんな祭りの中に彼はいた。

「・・・・・・疲れた。」

手にラムネの瓶を持ちながらカイトは肩を落としながら歩いていた。その顔は祭りを楽しむ人達とは全く逆に疲労感たっぷりである。

「・・・誰もいないなぁ・・・」

祭り初日から人手不足ということでウリバタケに連れて行かれたカイトはようやく解放・・・楽しもうと気を直しても知り合いが誰もいないのでテンションは下がる一方、カイトは当ても無く歩き回っていた。

「!!」

そんなカイトの背中に突然の衝撃が、疲労困憊、睡眠不足のカイトにとってその衝撃は充分すぎるほどのきっかけだった。

「ヨッ!!な〜にしてるんだよ?」

その声はリョーコだった。当然のようにカイトを見つけたリョーコは挨拶代わりに背中にキツイ張り手を一発・・・いつものカイトなら痛がっても何らかの返事を返してきた、しかし今回だけは少し違った。

「ってあれ?」

返事が無い・・・おかしい、そう思ったリョーコは改めてカイトを見た、しかしそこには姿が無い、探すように辺りを見たリョーコは直ぐにカイトを発見した。

まるで潰された蛙の如く、無残にも地面に張り付いているカイトの姿を・・・

「おっ・・・オイ!!」

リョーコは驚きながらもカイトを抱き起こした、しかしやはり返事は無い・・・リョーコは昔習ったように手首に指を当て脈を知ろうとした。

「・・・・・・。」

もう一度・・・。

「・・・・・・。」

リョーコの頬を一筋の汗が流れ落ちた。

「・・・・・・し、死んでる。」

脈が無い・・・リョーコは大いに焦った。自分が殺したのか?このまま殺人で刑務所?いやいやいっその事逃亡生活を・・・様々な考えがリョーコの頭をよぎり、嫌な汗が体に纏わりついてくる。

「おっ、オイ!!オイッたら!!」

激しく体を揺すってみる・・・返事無し、焦りまくるリョーコは微かにカイトの唇が動いている事に気がついた。恐る恐る耳を近づけてみる。

「ク〜・・・ク〜・・・」

静かな寝息だった。それで生きている事を知ったリョーコは大きな溜息と共に安堵した。所詮付け焼刃の脈なんて信用できるはずが無い、戦う事に関してはプロでも治すことに関しては素人だ。そんな事よりも今はカイトが生きている事に安心していた。

「はぁ〜〜・・・心配させるなよ」

今まで焦っていたリョーコはようやく落ち着きを取り戻した。自然とカイトの顔を凝視する。

「・・・・・・。」

顔が赤くなっていくのをリョーコは感じた。付き合いはそれなりに長いがマジマジとここまで近くでカイトを見た事なんて無かったのだ・・・端整な顔立ち、潤った唇、何故か見てるコッチが恥ずかしくなってきた。

「・・・どうしよ、コイツ」

顔を反らしたリョーコは未だに目を覚まさないカイトの事を考えた。








「何処だココは?」

一面に広がる草原・・・そして何故か目の前にいる子犬。

「んっ?」

妙になついてくる子犬をカイトは抱きかかえた、そしてカイトの顔を舐めてくる。くすぐったさに子犬を持つ手が緩んだ、いち早くそのことに気づいたカイトは落とさないよう、ついつい強めに子犬を抱きしめてしまった。



ムニュ・・・



「あれ?」

明らかに子犬を抱きしめた感触では無い、確かめるようにもう一度握ってみる。



ムニュ・・・



暖かく柔らかい・・・そして変な事に気がついた。子犬が巨大化している、両手から少し溢れるくらいだった大きさがいつのまにか両手を回さないと持てないくらいの大きさに・・・そう、例えば女性の腰のような・・・

「!!」







「んっ?」

背中に痛みを感じながらカイトは目を開けた、しかし視界がハッキリしない。ボォ〜としながら数秒後、先ほどの事が夢だったと悟る。そして妙に感触がよかった先ほどの事を思い出した。

さらに数秒後、後頭部に柔らかいものが当たっていることに気づく・・・

「・・・あれっ?」

先ほどの感触に似ている事に気づくと意識がハッキリしてきた。そして自分を見下ろしている人の存在に気づいた、紺色の短い髪、真っ赤に染まる頬、赤みを帯びた唇・・・

「・・・・・・?」

カイトにプルプルと小刻みに何かが震えのが伝わってきた。

「・・・・・・リョーコさん!?」

ようやく自分を見ているのが誰だか理解できたカイトは横になりながらも叫んだ。そして自分の手が何を触っていたのかも・・・

「カ〜イ〜ト〜〜〜」

カイトは横になりながらリョーコの腰に手を回していたのだ。そして先ほど感じた後頭部の感触・・・それはまさに人々の憧れ(?)の膝枕だった。その事を理解したカイトは悪寒を感じる。ビクビクしながらゆっくりと体を起こして立ち上がった。

「ハハッ・・・」

汗ダラダラになりながら頭を掻くカイトだったが、そんなことは関係なかった。ギロッとカイトを睨むとリョーコも立ち上がり大きく一歩踏み込んだ・・・

パッ――――ン!!







「・・・・・・。」

祭りの中を人ゴミを掻き分けながらリョーコは早足で歩いていた。そして人にぶつかっては謝りながらリョーコを追いかける影が一つ。

「待ってくださいよ!!」

顔にはくっきりと真っ赤な手形がついている。カイトはヒリヒリするその痛みに耐えながらリョーコを追っていた。

「・・・・・・。」

「(あぁ〜怒ってるよ・・・)ごめんなさいってリョーコさん・・・あれは夢の中で子犬が・・・」

「・・・・・・。」

ペコペコしながらリョーコに付いて回るカイトだったがリョーコは完全に無視、ズカズカと道を進んでいった。

「・・・何でもしますから許してください!!」

その言葉にリョーコは足を止めた、反転するとカイトの顔を凝視する・・・

「・・・ホントだな?」

「えっ・・・」

「なんでもするんだな?」

「まぁ〜僕にできる事なら・・・」

その言葉にリョーコはニッコリ微笑んだ。

「よし!じゃあ今日は最後まで俺に付き合え・・・」

「う、うん・・・それでいいなら・・・」

「よし、決まりな!!」

リョーコは強引にカイトの手を掴むと、どっかへ連れて行こうとするのか走って行った。

「(まぁ〜今日ぐらいワガママ言ったって大丈夫だよな?)」







「・・・ま、まだですかぁ〜」

カイトはこれほど自分の言葉に後悔した事は無かった・・・あれから早三時間、疲れを知らないリョーコは端から端へ行ったり来たり、ただでさえ死にそうだった体に鞭打ってここまできたが限界に近かった。

「・・・まだまだ・・・オッ!あれ面白そうだな?」

「あれ?」

カイトは顔を上げた・・・かなり巨大なテントが目の前に広がっている。そしてそのテントに飾られた看板をカイトは見つめた。

『君にもエステバリスが動かせる!RC1/2エステバリス 作・ウリバタケ・セイヤ☆』

「(なんじゃそりゃ〜〜・・・しかもウリバタケさん、関わってるよ〜〜)」

嫌な予感が有った・・・明らかに怪しい看板、しかも作ったのはウリバタケ・・・カイト曰く『爆発の可能性大』である。そんなカイトの気持ちを知ってか知らずかリョーコは笑顔のままテントに入っていった。

「おっ!お前ら来たのか?」

入ると同時にかけられたその声に二人は声のした方を向いた。ウリバタケだ、いつも通りオイルにまみれたつなぎに手をスパナを持ちながら立っている。

「こんちは〜」

「ヨッ!!」

「おぉ!来たって事はやってくんだろ?自慢じゃねぇが会心の出来だぜ!!」

スパナを構えウリバタケはニッコリ笑った・・・別に普通なのだが何故か嫌な予感が止まらないカイトだった・・・

「オイ、カイト!!」

「は、はい?」

ウリバタケがカイトの顔を覗き込んだ。思わず一歩引いてしまう。

「お前もしかして・・・俺の作品が爆発するんじゃないかと思ってるんじゃないかぁ?」

「(当たってるよ〜)・・・そ、そんな事無いですよ♪」

「だよな!俺が作った『お祭りエステ4号』が爆発するはずねぇだろ?しかもおまえらはパイロットだからな、難易度も『超 デンジャラス VERY HARD改』にしといてやるよ!ちょっと裏技だが気にするな、オマケにしといてやるよ!!」

その時カイトは思った・・・『あぁ1〜3号は爆発したんだな』っと・・・そして裏技がどうのこうのと言葉が妙に気になった。

「まぁ〜〜コッチに来いよ、それでコレがコントローラーな!奥に出てくる敵をエステを操って倒す倒す!!Aボタンが射撃、Bボタンが殴る、十字キーで移動だ!」

説明をしながら三人は奥に入って行った。ウリバタケの説明によるとエステを使った射的ゲームと思っていいらしい。階段を上ると下にジオラマの町が広がっていた、そしてその町の中に3mぐらいのミニエステが2機、どうやらこれを操るらしい・・・カイトは手に持つコントローラーの感触を確かめた。

「へぇ〜結構楽しそうじゃん!」

「(リョーコさん・・・そんなこと言っちゃ駄目だぁ〜)」

「フッフッフ・・・よくぞ言ってくれた!コントローラーで動かすロボット・・・
巨大だったら文句ないんだが、ともかく

ロボットは電波で動かしてこそ男のロマン!!

と言う訳でスタート!!ポチっとな」

ウリバタケが柱につけられたスイッチを入れると一面のライトが消え、ジオラマだけがライトアップされた。

「(結構お金かかってるな・・・恐らくネルガルが出資だからって無理をやったに違いない・・・)」

そう思いつつもカイトは十字キーを動かしてみた、動く・・・Aボタンを押す・・・弾が出た・・・少しの時間で操作の仕方を復習するとチラリと横を見た、そこではリョーコがカイトと同じようにコントローラーをいじっていた。

「おッ!バッタが敵か・・・」

ジオラマの奥から数機のバッタが出てきた。ぎこちない動きで二人は撃破していく・・・

「なんだ楽勝じゃん!」

リョーコがそう口走った瞬間、後悔した・・・

「「・・・・・・。」」

出るは、出るはバッタが出るは・・・一瞬にして数百機のバッタに囲まれた。

「(さすが、超(略)HARD改だ・・・)」

何だかんだ言いながらカイトはゲームに熱中していた。実戦さながら真剣にエステを操っている。カイトでさえ熱くなるのだ元々熱くなりやすいリョーコはというと・・・

「オリャァァ――!!」

この様である・・・激しくコントローラーを叩いていた。



そして10分後・・・



「・・・!!・・・焦げ臭い・・・」

ゲームに熱中していたが、それでもシッカリ冷静な部分は残っていた。カイトは直ぐに変な臭いに気がついた。

辺りを見回すと今まで操っていたミニエステの各所から火花が上がっている。そしてジオラマの床にはいかにも怪しい液体が・・・

「いっ!!・・・リョーコさん!!」

事態を把握したカイトは直ぐ横にいたリョーコを抱きかかえると・・・一目散に逃げ出した。

「バ、馬鹿!!何しやがるんだよ!!」

突然のことにリョーコは少し抵抗した、しかし内心そう嫌でもないらしい頬を赤くしながら落ちないようにカイトの服を握り締めている。



ドッカ――――ン!!



その時・・・天に向かって火柱が立った・・・







「だ・・・大丈夫ですか?」

まるで何処かのコントを思わせる黒焦げの姿でカイトは無事なリョーコを地面に降ろした。

「あ、あぁ・・・お前こそ大丈夫か?」

「・・・いえ・・・」

力尽きたようにカイトはリョーコに倒れ掛かった。

「お、オイ!今日2度目だぞ!!オイ・・・」







「うっ・・・う〜ん・・・」

カイトは目を覚ました・・・そして思う、今日は最悪だと・・・しかし後頭部に感じる感触は悪い気はしなかった。

「大丈夫か?」

リョーコはカイトの顔を覗き込んだ、あまりにも近くにあるために思わずカイトは赤くなりながら目をそらした。

「まぁ〜とりあえずは・・・」

「ありがとな・・・」

「えっ・・・」

あまりにも素直なその言葉にカイトは驚いた・・・そしてリョーコと目が合ってしまう。

「「・・・・・・。」」

火が付いたように顔が赤くなっていく二人・・・そんな状況に耐えかねたのか、リョーコは膝の上からカイトを退かし立ち上がった。

「・・・な、なんか飲み物買ってくるよ!オレンジジュースでいいな?」

「あぁ・・・ハイ・・・」

カイトが答えるのを聞いたリョーコは少し駆け足で歩いていった。

「!!」

クラクラする頭でリョーコを見送ったカイトは不思議な事に気がついた。リョーコが歩いていった先にお祭りには付き物の怖そうなお兄さんの方々が後を追うように歩いていったのだ。

「あれは・・・・・・。」







「・・・・・・。」

人気の無いところにある販売機でジュースを買ったリョーコは急いでカイトの元に戻ろうと振り返った。その顔には自然と笑顔が浮かんでしまう、赤くなるカイトというのは新鮮で初々しいモノがあったのだ、目をつぶるとそこにはカイトの顔が有った。

「フフフ〜ン♪」

気分は最高である・・・しかし振り返ったリョーコは大きく溜息を吐いた。

「はぁ〜・・・」

そこには怖そうなお兄さんが五、六人・・・今にも襲ってきそうな雰囲気である。

「俺達と遊ばな〜い♪」

ニタニタ笑いながら一人の男が声をかけてきた。良かった気分を台無しにされてリョーコの怒りは最高潮である目の前の男達を秒殺する自信があった。

「消えろ!(来たらタコ殴りだ・・・)」

「連れないなぁ〜〜」

男達はリョーコを囲むように移動していた。もちろんリョーコは動揺するはずも無い。

「チッ・・・」

首を回したリョーコは手に持つジュースを捨てようとしたその時・・・

「コラ!!貴様ら!何やってるんだ!!!」

野太い男の声がその場に響き渡った、その声にリョーコを囲っていた男達は激しく動揺した。

「おい、どうするよ?」

「やべぇ〜んじゃない?」

「逃げる?」

「あっあぁ・・・そうだな・・・」

小声で話し合った男達が散るのに時間はかからなかった。一分もしない内に影も形もいなくなってしまった。いろんな意味で情けなさすぎる・・・

「折角、ボコボコにしてやろうと思ったのに・・・」

そしてリョーコは向こうから歩いてくる人影に気がついた。

「カ、カイト!!」

ボロボロの姿でカイトが歩いてきた・・・その顔は苦笑している。

「な〜にやってるんですか?」

「・・・あ、じゃあさっきのは・・・」

「コラ!!貴様ら!何やってるんだ!!!ですか?」

「おまえだったのか・・・余計な事しやがって・・・」

「僕はあの逃げてった人達を助けたんですよ・・・凄い殺気でしたから」

「・・・バ〜カ」

リョーコは近づくと手に持つジュースを渡した。

「ありがとです・・・。」

「・・・なぁ〜カイト・・・」

人ゴミの中でカイトの横を歩くリョーコが妙に真剣な口調で話し掛けてきた。

「何です?」

オレンジジュースを啜りながら顔をリョーコの方に向けた。そこでは真剣な表情のリョーコがいる。

「祭りってまだ続くよな?」

「えぇ・・・まだまだ続くらしいですよ。」

「じゃあさ・・・」

そこまで言うとリョーコは俯いてしまった。よ〜く見るとその頬は明らかに赤い・・・

「「・・・・・・。」」

「・・・また一緒に祭り回らないか?」

「えっ?」

カイトは聞きなおした。しかしリョーコの言葉はしっかりカイトの耳に届いていた。しかしリョーコらしくないその台詞に思わずカイトは聞き返したのだ。

「・・・・・・。」

「んっ?(さっきのは聞き間違いだったのか?)」

「・・・また一緒に祭り回らないか!!」

そう言ったリョーコは益々顔を赤くした、触ったら火傷しそうな赤さだ。

「「・・・・・・。」」

「いいですよ。」

カイトはニッコリ微笑んだ。そしてリョーコはカイトに見えないように手でガッツポーズを取る。

「でも条件が・・・」

「な、なんだよ?」

「もう少し女らしくしてくれたら・・・また一緒に回りましょう。」

「グッ!!」

カイトの一言にリョーコは腰を折り曲げた。絶妙な場所にボディーブローを食らったような曲がり方だ。

「じゃあ、どうすればいいんだよ?」

「う〜ん・・・浴衣着るとか?」

リョーコは自分の姿を見た・・・青いシャツにジーパン、いつも通りの私服だった。別に可笑しくは無いが祭りという事もあって浴衣を着てる女性が多く居たのだ、それがカイトをこの考えに導いた。

「わ、わかった・・・約束だからな?」

「もちろん・・・」

そして二人は別れた、しかしカイトは一つミスをしたのだ。祭りはまだまだ続き・・・そして祭りとは男と女の戦いだという事を・・・

戦いは続くのだ・・・カイトにとって祭りという戦いは・・・

余談だがその日の深夜、爆発現場の下からボロ切れのようなウリバタケが発見された。といっても次の日には別の屋台を開いていたが・・・彼にとっても祭りは戦いだった・・・

祭りはまだまだ続く・・・



つづく




後書き

どうも海苔です♪

う〜ん難しい!難しすぎるよリレー小説!!

というわけでどうでしたかねぇ〜リョーコ編は?少し短かったかな?

別なSSでルリちゃんを書いているので今回はリョーコさんにしました。

終わり方こんな感じでよかったのかな?

とりあえずバトンタッチです(^^)
星風さん、頑張ってくださ〜い(^▽^)/

それではこの辺で・・・海苔でした♪





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